2014年11月16日日曜日

商売の自由と知的財産


発明を創造したら特許や実用新案を取得することができる。しかし、発明は必ずしも売れる商品になるとは限らない。すなわち、発明を創造することと、市場を創造することは異なる”知”が必要であるからだ。

発明の創造性は、上述のように、特許や実用新案で保護できるが、市場の創造性は、保護されにくい。それは、商売の自由という異なる価値観が働くからである。

過度の知的財産保護は、商売の自由と繁栄の阻害になるともいわれている。例えば、ハリウッドの創始者達(ユニバーサルやパラマウント)は、エジソンの特許を回避するために西海岸まで逃れ(当時、西海岸まで特許が及ばなかったと言われている)、その映画技術に基づいた映画産業を振興させたとも言われている。

市場に対する“知”を権利として保護したいと考えて生まれたのが、ビジネスモデル特許という保護方法である。ビジネスモデル特許は、2002年あたりに一大ブームになり、住友銀行のパーフェクト特許などが話題となった。

現在は、ポスト・ビジネスモデル特許の時代になったと言えるが、ビジネスモデル特許はソフトウェア特許という形で事実上、存在している。すなわち、ビジネスモデルのうち、コンピュータやインターネットを利用して処理が行われるシステムや方法であれば、特許で保護されるのである。

ところで、日本では年間33万件近くの特許申請がされているが、皆さんは、この1割の3万件ほどのヒット商品が毎年、産まれてきていることを実感しているだろうか?

答えはNOであろう。

すなわち、発明を創造よりも、市場を創造することのほうが困難ではないか、ということが予想できよう。しかし、発明を組み合わせれば、市場を創造しやすくなることは事実のようだ。

我々が、この製品は革新的だと思うような商品、例えば、アップルのiPhoneや富士重工のレボーグなどの車は、知財ミックスと言われ、数多くの知的財産が埋め込まれている。それは、その機能を実現する発明のみならず、外観やパッケージ、又は、アイコン等のデザインや、消費者が覚えやすいネーミングなどの複数の知財がミックスされた製品なのである。逆に言うと、市場を創造するには、知財ミックスであることが前提条件となる。

多くの発明やデザインをミックスしないと、市場を創造することはできない・・とすると、自分がヒット商品を創造できるのだろうか・・と不安に感じる経営者もいるだろう。しかし、そのような受動的な考え方では、市場は創造できないのではないだろうか。

なぜなら、市場を創造するとは、既存の技術などの固定観念に捕らわれず、消費者が純粋にほしいと感じているアイデアに対し、新しい技術を産みだして実現された産物なのである。そのような産物だからこそ、結果として、新しい”知”がミックスされた製品になっており、市場が創造されるのである。

私の事務所には、九州の多くの発明家に訪れていただくが、彼らが悩んでいることは、発明品を販売し、ヒット商品にすることである。どうやったらヒット商品になるか?成功されている発明家の共通した考え方は、発明の完成を最初の一歩にすぎないと捉え、市場の創造に向けて、さらに、歩き始める人たちではないだろうか。

(宮崎太陽銀行 掲載コラムより)