2015年11月22日日曜日

発明家が経営者へ旅立つとき。

今年のコンテスト授賞式の後の写真
(知っている人が多く驚きました!)
※宮崎商工会議所様より掲載許諾いただきました

弊所が応援している2名の発明家が、宮崎商工会議所主催のビジネスコンテストにて、なんと、2位、3位に入賞しました!

3位は、「ガチャロック」というサーフィンのフィンを簡単に取り付け可能な器具を発明した、梅ちゃんこと、梅山さん。経営者としても頼もしい女性発明家です。発明の詳細は下記まで。

https://m.facebook.com/i-deamake-%EF%BD%B1%EF%BD%B2%EF%BE%83%EF%BE%9E%EF%BD%B1%EF%BE%92%EF%BD%B2%EF%BD%B8-831341406941765/

2位は、弊所が昨年から応援している、楽にこげる自転車ギアの浜元さん!その後、宮崎県内の複数の会社と提携し、海外販売まで視野に入ってきました。芸術的な発明家である浜元さんの表情が、だんだん経営者の表情に変わってきていることを日々感じていたなかで、ビジネスプランコンテストでの受賞。発明が商品になっていくことを感じています。商品の詳細は下記まで(音楽が鳴りますので注意)。

http://hamamotoyouichirou-bicycle.com/

会社の成長は、社長(発明家)の成長だと思います。発明が単なるアイデアだけで終わらず、それで事業を行うために、経営者へと旅立つ姿は、発明にかける”覚悟”が決まっていて、素晴らしい決意だと思います。

地方の発明家は本来、地方に新しい製造業を生み出す力があるのですが、なかなか、発明が事業になれません。単なるアイデアで終わってしまうからです。しかし、この2人は堂々と、発明家から経営者に旅立っているので、尊敬するとともに、非常に嬉しく思いました。

コンテスト受賞は、通過点ではあると思いますが、お二人のさらなる飛躍を期待したいと思います。受賞おめでとうございます。

2015年10月3日土曜日

宮崎の発明がシンガポールで展示されました!

写真の一番右のパネルになります。

9月22日,23日にシンガポールで開催されたTechInnovation2015に、宮崎の個人発明家の自転車の発明が展示されました。

海外でもこの発明を知ってもらいたい・・と思っていながら、なかなか、実現できなかったのが現状でした。今回、この発明の協力をいただいているIPBridge社のブースをお借りして、パネル展示させていただきました。

こちら、自転車のギアを2重構造にして、弾性体を利用した発明なのですが、発明の性格上!?、イメージしやすい発明なのか、目をとめて、興味を持っていただいた方が多かったということ。

今回の展示で、この発明が、グローバルでも、一般の方に興味を持たれる発明であることが、実感として確認できました。

この発明の出口は、この程度で終わりではありません。さらに、大きな挑戦を発明者さんと進めていきたいと思っています。

2015年9月22日火曜日

知財を重視するベンチャー企業


佐賀大発ベンチャーの株式会社オプティム。
ここの菅谷社長の本がダイヤモンドから出ました。僕もこの方と出会わなければ、独立しようと思わなかったぐらい影響を受けました。若者の熱い仕事の作り方や、情熱の出し方が泥臭く伝わってきます。ある意味、九州気質?特許の話もたくさん出てきますので、手にとってみてください。
「おわりに」で、会社をお金で見ている中国人投資家への社長の返答は、ちょっと格好いいです。続きは書店で!僕も最後にちょこっと出てます

2015年6月9日火曜日

「色だけの商標」の意味って!?





この色を見て、どこかの商品を思い出しますか?

そうです。こちらは、Tiffany BLUEという色で、貴金属を販売するティファニーが1837年から使用している色です。

その色を見ると、すぐに、その商品やサービスを思い出す・・ということは、色彩がどこのメーカの商品であるかを識別してくれるわけです。

このような色彩を、商標的な効果がある色彩、と言います。

仮に、この色を包装紙等で使用する宝石を販売した場合に、Tiffanyと書いていなければ、ティファニー社の商売に対する侵害にはならない!?・・というのでは、不合理ではないですか?

そこで、色彩のみについて、商標を取得できるという制度が、日本にも導入されました。

つまり、この色のみで権利が取れるので、この色を使って、同じような商売を行うことは、商標権の侵害になることがありえるわけです。

4月からこの「色彩のみからなる商標」の制度が始まり、既に200件以上(2015年5月31日現在)の申請があったようです。

この申請の中に、下記の商標が申請されています。(商願2015-29957より抜粋)




これは、何のサービスかわかりますか?「餃子の王将」のマークですね。この場合、色以外に、「く」の字の模様も含まれています。つまり、図形と色彩の混合の商標になるわけです。

そうすると、色を真似て、図形のみ変えたマークを使用する餃子屋さんは、どうなるのでしょうか?

その場合、商標が類似かどうかを判断するときに、「色彩」が最も重視されて、図形は、参考的な判断となります。つまり、図形の相違は、比重が高くない(考慮されないといっても良い)のです。そういった意味で、特許庁はこの商標を「色彩のみからなる商標」と呼んでいます(配色された色の相対的な面積は規定されます)。

色彩の商標制度が出来る前でも、実は、上記のような餃子の王将のマークは、文字なしのロゴとして、登録が可能でした。

しかし、ロゴの図形が異なって、色彩のみが同じ場合に、模倣者を侵害と出来にくかったのです。そこで、今回の色彩商標制度により、このような模倣の防止をすることができるようになりました。

色を、商品や企業イメージで利用されている企業は、検討してみてもよいのではと思います。

2015年5月6日水曜日

特許開放とはどういう意味なのか  -トヨタのオープン特許戦略-

 昨年末に発表されたトヨタの燃料電池車「ミライ」。水素充填3分で650kmの走行が可能なエコカーである。先日、この燃料電池車(FCV)に関する特許約5,700件をトヨタが無料で開放するという報道がされた。特許はおおよそ1件あたり成立まで、50万円近いコストがかかる。仮にその額であるとすると、5700件  50万円=285000万円を他社にサービスするというわけだ。なぜであろうか?

 知財業界では、現在、オープン&クローズ戦略というのが一つのキーワードになっている。オープン&クローズ戦略は、東大の小川紘一先生の理論であり、これは、自社の技術を他社に使わせるオープンな領域と、他社に使わせないクローズの領域を明確に分けて、新商品や新サービスを業界に仕掛けていく戦略である。米国のテスラモーターズでも、昨年6月に、トヨタと同様、電気自動車に関する特許を開放している。トヨタもテスラも単純に、技術をオープンにしているだけにみえるが、彼らがクローズにしている領域はなにか?企業であるのだから、当然、慈善事業ではなく、売上げに結びつける必要がある。

 実は、この特許の開放は期限付きなのである。特許の開放は、2020年末までに限っているのだ。したがって、2021年からは、参入した他社や協力会社は、トヨタに特許料を支払う可能性が出てくるのである。このケースでは、トヨタは、他社や協力会社の参入を促進しなければ、水素ステーションが全国に配置されないし、水素以外の技術での車の開発が進んでしまう可能性がある。そこで、2020年までの5年間だけ、特許を無償開放したというわけである。2020年からは利益を得られるクローズ戦略なのだ。

 この事例を参考に、貴社でも、自社の情報の、何を、いつまで、オープンにして、何を、いつまで、クローズにすれば、事業が成功するか考えてみてはいかがだろうか。オープン&クローズ戦略は、決して技術的に高いレベルにないと出来ない議論ではない。身近な例を上げてみよう。

 先日、宮崎県の都農町で、「都農トマト鍋」というレトルトのトマトスープを販売している団体(都農もりあげ隊)の代表の矢野さんとお会いした。この方は、「トマト鍋という言葉は、都農町全体で、はやらせたい」とのこと。そこで、商標としては、「都農トマト鍋」(文字のみであれば地域団体商標)では申請せずに、団体の名前である「都農もりあげ隊」で申請をした。些細なことかもしれないが、この例では、「都農トマト鍋」を都農地方のトマト農家全体で盛り上げる・・といったオープン戦略(イノベーションの誘発)と、その商品の出所を表す「都農もりあげ隊」は、商標で守りたいといったクローズ戦略を意識している。例えば、「都農トマト鍋」の商標を取ってしまったら、都農地域の「トマト鍋」の他社の参入を許さないので、「トマト鍋」自体が、この地域全体で流行らなくなってしまう可能性がある。しかし、「都農トマト鍋」という言葉をオープンにすることで、地域全体での宣伝効果が高まるし、行政に協力してもらいやすくなる。

 オープン&クローズ戦略という現在流行の知財戦略は、ちょっとした事から始められるのである。貴社もトヨタや「都農トマト鍋」に負けずに、この戦略を意識してみてはいかがであろうか。




(*)「都農トマト鍋」の文字そのものは、地名+普通名称の組み合わせで商標の登録は困難とも言えるが、文字をロゴなどと組み合わせて権利化する場合は商標の登録が可能となる。ロゴも権利に含まれるが、一般には、文字で権利が取られたと誤解されてしまうことが多く、結果として、他社の参入が促されないことが多い。

(宮崎太陽銀行 「知財の散歩道」 第3回コラム)

2015年3月23日月曜日

宮崎で一番需要がある知的財産権は?

日南家具工芸社にて飫肥杉のものづくりを見学させていただきました。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」。有名な福沢諭吉の「学問のすすめ」のくだりである。天が人を生み出した時、人は同じ権利を持つ。しかし、なぜ現実の世の中では、人によって、社会的な地位や資本力の差などの違いが生じるのか?諭吉は、それを「人は学ぶか学ばないかによって人としての差ができる。人は学ばなければ知はない。知のないものは愚かになる」と説いている。

知は、本来的には、何か目的を達成するために、人間が活用できる道具ともいえよう。ここで、我々の社会は、資本主義社会であるから、経済的な効果を得ることを目的として“知”を活用する。したがって、今の社会では、経済的な効果を発揮できる “知”こそ、知的財産と読んでおり、知的財産とは、特許発明となる技術、意匠的なデザイン、ブランドとなる商標、書籍や文学などの著作物、営業上の秘密等の商業的な成功に結びつく可能性があるものを、知的財産と呼んでいるといえよう。

さて、宮崎県や鹿児島県で一番需要がある知的財産の種類は何か?この質問は答えが難しいと思うので、弊事務所の場合でお答えすると、案件で最も多い知的財産の種類は、「商標」である。商標とは、商品やサービスに使う文字やマークである。例えば、自動車メーカの本田技研工業は、商品「自動車」に「HONDA」というネーミングの商標と、車のエンブレムのマークの商標を所有して他社の模倣を防止している。

ところで、皆さんは、「日向夏」が、お菓子の商標として日本で既に登録されていることをご存知であろうか?日向夏は、実は、ある会社がお菓子で取得した登録商標である。したがって、「日向夏」という言葉は、商標権者以外はお菓子では使えないはずである。しかし、県内のスーパーやお土産屋さんでは、「日向夏」と表示されたアメや和菓子等を、様々なメーカが販売しているのを見かけるであろう。実は「日向夏」という言葉は、既に柑橘類の一定の種類を表す果物として、普通名称となっているのである。この場合は、商標権の権利は行使することが出来ず、他の業者が自由に使えることができるのである。

商標で最も多いトラブルは、起業時や新商品開発時のネーミングの問題である。皆さんが新しいネーミングを付けた場合に、それが既に誰かの登録商標であるという問題だ。ネーミングを考えた場合は、その名前が、他人によって商標を登録されているか否かを確認していただきたい。先日も、オープンしたての宮崎県内の飲食店が、東京の商標権者の飲食店と全く同じ名前の店名を付けて、警告されて、店の看板、チラシ等を全て作り直しとなり、起業時に数十万円近くの損害となった。

特許庁電子図書館では、初心者用の商標検索があり、インターネット検索のように、すぐに簡単な商標調査を行うことが可能である。ちょっとした確認で、損害賠償を避けられるのであるから、是非とも実施していただきたい。ただし、自分の名前と、他人の登録商標が全く同一ではなく、微妙に異なる場合は、専門家でないと判断が難しい。その場合は、お気軽に弊所にご連絡を!

宮崎太陽銀行 「知財の散歩道 」第2回 コラム

2015年2月6日金曜日

中小企業にとって知財のメリットって本当にあるの??

中小企業のものづくりにおいて、知的財産権を活用するメリットとは何だろうか。

基本的に、知的財産権は、アイデアやネーミングなどに、特許権や商標権等を取得することで、他人による、同じような製品の製造・販売を防ぎ、自社の売上を確保するためのものである。

とはいえ、決して安くない特許や実用新案、商標の申請と取得のコストをかけてまで、厳しい中小企業が知的財産権を取得するメリットは何なのだろうか。

 知的財産権というと、アップルとサムソンなどの特許侵害訴訟をイメージすることが多いと思うが、日本では、年間、特許申請数が35万件近くありながら、特許侵害訴訟が500件程度(2011年)しかない。

しかしながら、これほど多くの出願申請があるのは何故であろうか。知的財産権を実際に裁判所等での係争で活用せず、出願申請し、登録するだけでも、メリットがあると考える経営者が多いようだ。

すなわち、特許などの知的財産権が、営業を補完するために機能することで企業の売上を向上させるのというメリットを指摘したい。
 
製造業がものづくりで成功するためには、市場が求めるものを開発するニーズ開発と、そのニーズを技術的に解決するためのシーズ開発の両方が必要である。
 
 シーズ開発された製品が、世界初の技術が含まれることで、特許を取得した場合には、製品のパッケージに「特許製品」という言葉を含めることができる。これは、消費者に対し、この製品は、この技術分野の中で、世界で初めての技術が含まれるから、かつて予想できないほどの商品力があるのではないか、といった期待を与える。結果として、シーズ開発された技術に期待させ、消費者の購入意欲を向上させるであろう。
 
 加えて、大手企業から仕事の受注を得るために、他の競合企業と価格競争でのみ競り合うのではなく、特許の存在が武器になるというケースもある。例えば、受注予定の商品やサービスが画期的な特許技術で実現されることで、それが従来にない画期的な商品やサービスになることをアピールし、さらに、他社がこれを行えば、侵害行為となるか、ライセンス許諾を受ける必要があるため価格が上がってしまうことを、暗に匂わせるのである。

特許制度は、特許庁の審査官が、そのアイデアやデザインが新しいことを、先行した文献から調査し、審査を経て、登録を決める制度であるため、世の中でこの製品が新しいことが客観的に担保される。このように製品の真新しさを行政機関が担保してくれる手段は、特許制度以外には、存在しない。
 
 宮崎などの豊かな地方には、知が詰まっている農産品・工業製品が溢れている。しかし、他社や他県によって、アイデアやデザイン、ネーミングを模倣され、その果実となる大切な利益が吸い取られてないであろうか。知的財産権は、そのような模倣対策にも効果を発揮する。しかし、それだけではない。他社や他県にない、新しい技術であることを知ってもらうために利用することで、製品の消費者や流通業者に対する営業効果を高めるという効果も意識したい。

【ポイント】

★知的財産権の第一のメリットは、アイデア、デザイン、ネーミング等の模倣防止

★技術の新しさを客観的に、行政が担保してくれるものは特許制度しか存在しない

★知的財産権の第二のメリットとして、商品やサービスの営業効果を高めることも意識したい

宮崎日日新聞 2014年5月8日掲載(マーケと知財のイノベーション⑥)