2015年2月6日金曜日

中小企業にとって知財のメリットって本当にあるの??

中小企業のものづくりにおいて、知的財産権を活用するメリットとは何だろうか。

基本的に、知的財産権は、アイデアやネーミングなどに、特許権や商標権等を取得することで、他人による、同じような製品の製造・販売を防ぎ、自社の売上を確保するためのものである。

とはいえ、決して安くない特許や実用新案、商標の申請と取得のコストをかけてまで、厳しい中小企業が知的財産権を取得するメリットは何なのだろうか。

 知的財産権というと、アップルとサムソンなどの特許侵害訴訟をイメージすることが多いと思うが、日本では、年間、特許申請数が35万件近くありながら、特許侵害訴訟が500件程度(2011年)しかない。

しかしながら、これほど多くの出願申請があるのは何故であろうか。知的財産権を実際に裁判所等での係争で活用せず、出願申請し、登録するだけでも、メリットがあると考える経営者が多いようだ。

すなわち、特許などの知的財産権が、営業を補完するために機能することで企業の売上を向上させるのというメリットを指摘したい。
 
製造業がものづくりで成功するためには、市場が求めるものを開発するニーズ開発と、そのニーズを技術的に解決するためのシーズ開発の両方が必要である。
 
 シーズ開発された製品が、世界初の技術が含まれることで、特許を取得した場合には、製品のパッケージに「特許製品」という言葉を含めることができる。これは、消費者に対し、この製品は、この技術分野の中で、世界で初めての技術が含まれるから、かつて予想できないほどの商品力があるのではないか、といった期待を与える。結果として、シーズ開発された技術に期待させ、消費者の購入意欲を向上させるであろう。
 
 加えて、大手企業から仕事の受注を得るために、他の競合企業と価格競争でのみ競り合うのではなく、特許の存在が武器になるというケースもある。例えば、受注予定の商品やサービスが画期的な特許技術で実現されることで、それが従来にない画期的な商品やサービスになることをアピールし、さらに、他社がこれを行えば、侵害行為となるか、ライセンス許諾を受ける必要があるため価格が上がってしまうことを、暗に匂わせるのである。

特許制度は、特許庁の審査官が、そのアイデアやデザインが新しいことを、先行した文献から調査し、審査を経て、登録を決める制度であるため、世の中でこの製品が新しいことが客観的に担保される。このように製品の真新しさを行政機関が担保してくれる手段は、特許制度以外には、存在しない。
 
 宮崎などの豊かな地方には、知が詰まっている農産品・工業製品が溢れている。しかし、他社や他県によって、アイデアやデザイン、ネーミングを模倣され、その果実となる大切な利益が吸い取られてないであろうか。知的財産権は、そのような模倣対策にも効果を発揮する。しかし、それだけではない。他社や他県にない、新しい技術であることを知ってもらうために利用することで、製品の消費者や流通業者に対する営業効果を高めるという効果も意識したい。

【ポイント】

★知的財産権の第一のメリットは、アイデア、デザイン、ネーミング等の模倣防止

★技術の新しさを客観的に、行政が担保してくれるものは特許制度しか存在しない

★知的財産権の第二のメリットとして、商品やサービスの営業効果を高めることも意識したい

宮崎日日新聞 2014年5月8日掲載(マーケと知財のイノベーション⑥)