2011年12月21日水曜日

学ぶために作る

「アイデアの良さを伝えるために何かを作るのではなく、それがどんなものであるべきかを考えるために何かを作るんです。」

クーリエ・ジャポンという雑誌が、講談社から出ています。私は、政治やグローバル社会の詳細を知るために、800円するこの雑誌を買うほど、心と懐の余裕がなく、本屋に並んでいても、いつも通りすぎる雑誌でした。

ですが、2012年1月号は、創刊6周年特大号で、MIT(マサチューセッツ工科大学)の特集を中心に未来のモノづくりについて、書かれています。エンジニアの将来が不安だったり、モノづくりって、今後も大丈夫なのだろうか?と思う理系出身の方には、お薦めしたい。

カルフォルニア州に本社を置く、デザイン会社「IDEO」のCEOであるティム・ブラウンは、迅速なプロトタイプ制作を行なって、デザイン思考でソリューションを提供する。

「誰も製作途中のプロトタイプをCEOに見せようとはしません。批判されたくないからです。」

「でも、本来、人は、アイデアの良さを伝えるために何かを作るのではなく、それがどんなものであるべきかを考えるために何かを作るべきです。」


そういえば、手を動かすこと、やめていませんか?


”アイデア”や”知”ということにこだわっている自分には、耳が痛い話です。

まず、モノをつくってみて、それから、学んで、さらに、知を掘り下げて・・。


聞いてみると当たり前のようにも思いえますが、みなさんも私と同様に、なかなか、腰が重く、手が動かせないのでは。

スタンフォード大学の学生であるフェロス・アブーカアディジエは、即時性のあるYoutubeを作って、第2のスティーブ・ジョブズと呼ばれている。彼は、こう言う。

「アイデアなんてどこにでも転がっている。肝心なのはそれを実行することだよ。」

彼のようなプログラマは、最初にプロトタイプを作ってみる。そして、最も厳しいユーザである自分が使ってみて、あれが駄目だ、これが駄目だ、と学ぶ。 彼自身は、様々な他のプログラムを知っているから、多くの駄目出し、ができて、自分自身で修正する。そして、彼が満足するものに完成する。

手を動かして、初めてアイデアが具現化して、さらに、良いものへと昇華する・・・といえばよいだろうか。

これは、新しいビジネスモデルに、挑戦することにもあてはまるのではないか。

自分の場合は、都会から地方に来て、知的財産でビジネスを初めている。ちょっと考えただけでも、お先真っ暗だ。既存のビジネスモデルでは、崩壊する。なぜなら、僕の県には、弁理士が実質的には3人しかいない。特許が出来る先生は2人だけだ。つまり、仕事が無い、もしくは、仕事が無いと思われている。

しかし、地方でのビジネスを学ぶために、地方に実際に出てみて、プロトタイプのビジネスをしてみるというのも、上記の意見では肯定してもよい!?

様々な、角度からビジネスアイデアを考えなくてはいけません。幸い、知的財産という仕事は幅が広く、奥が深いため、今までとは異なるアプローチで、やっていけそうな手応えも感じはじめています。

そして、考えたアイデアに沿ったプロトタイプのビジネスを責任をもって、主体的に始めることが、僕にとって、作ってから学ぶこと、なのだろう。プロトタイプのビジネスから学び、大いに修正して、昇華したビジネスモデルへと将来、発展させていきたい。

2011年11月21日月曜日

技能を技術に移転する際に、特許が役立つ

宮崎県工業センターの責任者の方に、県内企業の技術事情についてお聞きする機会がありました。

「県内の企業では、まだまだ、職人の経験や勘でやっている仕事が多いんです。作業の一つ一つを数値化したり、加工などの動作を単純化するまではいたっていません。職人の経験で製品を完成させても、オートメーション化された機械で製品を完成させても、どちらも製品はできますが、効率化という点で、異なってきます。」

「どういうことですか?」

「例えば、製品を作るための原材料を、効率化によって、少し減らすことが出来れば、原料費がうきますよね。」

「なるほど。」

「現在のように経済状況が悪いなかで、少しでも利益率を伸ばしたいなら、職人の技能でやっている部分を、誰でもできる技術に落としこんで、効率化を少しでもすれば、地域経済も良くなるのではと思います。まして、技能のある職人は、高齢化してきているので、技能の伝承をしなくてはいけませんが、職人に何年もついてこれる若者は、今の時代は、少ないです。ですので、結局、職人を要請できず、その企業は、技術力を失うということになりかねません。地域にとって、技能を技術に落としこむことは、生き残りのための大切な手段になると思います。」

「この技能を技術に落としこむ際には、ソフトウェアはとても効果を発揮するはずです。IT企業さんは、現在、インターネットやスマートフォンに注目していますが、我々のような中小企業の頭脳を作ってくれる企業が増えてくれても良いのではと思います。」

確かに、大田区や北九州を始め、日本各地の中小企業の職人の技能を技術に変えていかないと、高齢化によって、その職人さんを失って、結果的に、企業が衰退するということは大いに考えられます。

しかし、この技能を技術にすることは、問題点もあります。

技能を技術にしてしまうと、技術のほうが、技能よりも伝承が早くなるので、中国やブラジルに持っていかれてしまう可能性が高まってしまうのです。

と言いますのは、技能であれば、その職人しかその方法を実施できないので、その国で、同じことをできる職人が育たない限りは、製品を作ることはできません。

しかし、技術であれば、その製造装置を、その国に持っていけば、すぐに、製品を作れてしまうのです。つまり、中国などの安い労働力で、その製造装置を使えば、同じ製品を安く、簡単に作ることが可能となってしまいます・・。

では、どうしたらよいのでしょう・・。

技能にしておかないで、技術にすることは大事です。ですが、技術流出のリスクも高まる・・。その場合は、その国で、その製造装置や製造方法の特許を取得することが、解決方法の一つであると言えるでしょう。つまり、その製品を他人に作られてしまう可能性がある国にて、特許を取得して、日本の中小企業が独占的な実施を確保することです。

退職者による技術流出や、製造装置の海外への販売による技術流出は、自由な社会では、止めることができないでしょう。でも、特許権であれば、貴社の技術開発は保護されます。むしろ、ライセンスを許諾すれば、中国人が中国で実施していて、あなたの企業は、中国で何もしないでも、十分なライセンス料が入ってくる可能性があります!?

(そんな、うまくいく話ではないと思いますが、理論上は可能ですね。中国では、特許権を理解してもらって、かつ、技術的範囲に入ることを理解してもらうのが大変と聞いています。しかし、将来的には、中国の知財モラルも上がることを期待して、ライセンスを期待してもよいのでは、ないでしょうか。蛇足ですが、中国では、権利の対象がデザインである意匠のほうが、見た目でわかるので、侵害を理解しやすく、権利行使しやすいという話も聞きます。)

2011年10月28日金曜日

特許審決後の分割出願は認められるべきでは。

部下が顧客に対してミスをして、上司がそのミスを撤回。にも関わらず、普段忙しい上司に仕事をさせたツケを、顧客に負わせる。

つまり、

審査官が出願人に拒絶査定を判断し、上司である審判官が特許にして良いと判断し、特許審決に撤回したにも関わらず、出願人は、その出願について、分割出願をすることができない。

ちょっと厳しく言いすぎかもしれませんが、平成18年分割出願の時期的緩和による特許法改正は、そのような取扱いではないかと思われます。

特許庁は、この10年近く、多すぎる特許出願に対して、審査が追いつかず、出願人や発明を保護するという目的に加えて、審査の迅速化という目的から、特許法を改正しました。例えば、出願後の補正の制限は、審査が遅延する目的の補正は、認められません。つまり、審査が遅延するのならば、発明の保護が若干、蔑ろになっても、致し方ないということでした。

これに対して、分割出願の時期的緩和は、分割出願が可能なタイミングが増え、出願人にも大きなメリットがあり、かつ、無駄な分割出願が減り、審査の迅速化も促進される、効果的な改正だったのではと考えられます。

しかし、その内容を、さらに、もう少し出願人のメリットのために、改良されるべきではないかということを提案したいです。

分割出願の時期的緩和により、分割出願は、出願人にとって、特許網を生成するのに大事な手段になったように感じます。すなわち、中小企業では、特許出願のコストの関係や、発明の打ち合わせをまとめて行う関係から、一つの特許出願に多数の発明を入れ込むことが多々あります。そのため、分割出願を行なって、従属項を独立項にしたり、実際の実施製品に即したキーワードに限定して、再度、特許を取得するといった方法で、特許網を構築することは極めて有効に感じています。

現状の法制度では、審査官が特許であるとする特許査定では、分割出願ができますが、審査官が、特許にしてはいけないと拒絶査定をして、審判官が、いやそんなことないよ、特許にしても良いよといった場合(特許審決の後)に、分割出願を行うことはできません。

特許庁の見解(平成18年改正本)では、「審判請求前までに、分割出願する機会が十分に与えられている」ので、審判請求後は、分割できなくてもよい、ということですが、よく考えると、出願人としては、拒絶査定と判断されて、審判請求する出願を、分割出願する気には、まったくならず、特許審決後に、はじめて、落ち着いて、様々な権利取得を考えられる、というのが一般的ではないでしょうか。

特に、前置審査(審判請求後の審査官による再度の審査)後に、審尋で、特許は認められないとされ、審判官が招集されたあとに、即座に、特許審決となった場合、審査官の判断ミスという理由が大きいのですが、この場合に、分割出願ができず、出願人にデメリットが発生するのは、不合理に思われます。

特許出願数が減り始めた現在では、特許庁内の事情を優先するのではなく、もっと、発明やアイデアの源泉である出願人を大事にする改正を期待したいです。

2011年10月10日月曜日

オビワン・ケノービとAT&T特許の戦い


「数学は特許になるか」という論点についての書籍を見つけました。

スタンフォード大学で博士号を取得している数学者の今野浩教授が、「カーマーカー特許とソフトウェア」という新書を中公新書から出版されています(絶版されていますが中古で手に入ります)。今から、16年も前に出された本ですが、研究者の立場から述べるアルゴリズム特許の見解を知る大変よい本だと思います。この中から、AT&Tの特許に関する面白い事件を見つけましたので、紹介させてください。

かつて、AT&Tは、基礎研究に基づいて開発した成果を、世の中にオープンにすることで業界に技術を提供していました。例えば、UNIXシステムは、誰もが使用できるオープンなシステムとして提供され、現在でもUNIXのOSは健在ですよね(私もITエンジニア時代にお世話になりました)。しかし、このUNIXのオープン戦略とは、極端に逆の方向で、AT&Tが強権な特許権を行使したことがありました。

若き天才的な学者、カーマーカー氏は、線形計画法について、革新的な解法を見つけました。カーマーカー氏は、インド人で大学は最優秀の卒業で、大統領からもメダルを授与されているほど。しかしなががら、人徳としては、謙遜な態度を全く見せず、業界の先輩たちからは、嫌われ者。

そんな彼と、AT&Tが組んで獲得した特許が、線形計画法の数学的解法である

「カーマーカー特許」です。

これは、線形計画法に内点法という技術でアプローチした解法で、例えば、航空会社の人員の割り当てをどのように決めれば、一番、経営効率が良くなるか等の、経営に関わる問題を解くことができる可能性があり、経営合理化を推進したい企業が大いに関心を示しました。

AT&Tとカーマーカーは、この「カーマーカー特許」を利用したソフトウェア「KORBX」を開発しました。なんと、この値段が、当時の価格で11億円!

それでも、デルタ航空等の大手企業は、経営合理化のコスト削減のほうが額が大きいと考え、「KORBX」を購入しましたが、もちろん、この値段を払えない企業は全く利用することができませんし、今野教授達は、大学での研究利用にもかかわらず、権利行使をするという警告をAT&Tから受けたそうです。このようなAT&Tとカーマーカー達の独占排他的な行動により、そもそも人徳のないカーマーカーが、さらに、権利を独占しようとする特許の存在により、線形計画法の学会や、精通した学者たちとのネットワークが遮断されていきます。

一方、大学教授からなるベンチャー会社「XMP社」は、「カーマーカー特許」の技術である内点法を利用したソフトウェア「OB1」を、600万円近くで販売開始しました。

この「OB1」の名前の由来は?

なんとスター・ウォーズの「オビワン・ケノービ」からつけたそうなのです。悪の帝国といっては言い過ぎかもしれませんが、ダースベーダーに相当する「カーマーカー特許」に対して、正義の味方「OB1」が内点法の技術の普及を救う!と言う意図なのでしょう。

そんな「OB1」の技術は、微妙に「カーマーカー特許」の技術的範囲に入っていないため、AT&Tは強気に権利行使することができませんでした。しかし、その微妙な違いを裁判で判断するのは難しいため、訴訟を起こすという手段はありました。訴訟が起こされると、ベンチャー企業である「XMP社」は、高額の弁護士を何人も抱える必要が生じて、コストがかかりすぎます。そこで、権利範囲には入っていないけど、「OB1」の売上の5%をAT&Tに支払うので、「OB1」に権利行使をしないでくれという方法でお互いに和解しました。

このあと、「OB1」は、悪の枢軸「KORBX」をやっつけることができたでしょうか?

過去3年間で最も優れたソフトウェアに送られる「オーチャード・ヘイズ賞」の授賞式がありました。
ここで受賞したソフトウェアは、なんと、「KORBX」ではなく、「OB1」に贈られました。これが決定的になり、「KORBX」は、市場から撤退してしまいました。

結局、AT&Tの戦略は失敗に終わりました。今野教授の見解では、特許を利用したソフトウェアの高額設定と、線形計画法の研究者のネットワークを過小評価したことが失敗の原因ではないか分析しています。

まったく、そのとおりだなと思いますし、我々の特許権の活用に、参考になる事例のように思います。もちろん、現在では、数学的なアルゴリズムは特許として成立しません。しかし、数学のように広範囲に影響を及ぼす技術について、独占的に、その技術を囲うことは、イノベーションを阻害すると共に、業界関係者の共感を得られず、結果として、孤立することで、その後、他の技術に駆逐されるという例ではないでしょうか。

この例では、AT&Tの高額な価格設定や、カーマーカーの不遜な性格は、業界の悪者として、分かりやすいぐらいあてはまりますね。

現在では、このようなAT&Tのような会社が、もう少し、善者の顔をして、知財戦略と呼ばれる戦略で、巧妙に仕掛けてきているかもしれません。いずれにしても、「競合」している業界の関係者と、「協合」しなければ、どんなに優れた技術でも、繁栄させることはできないという好例ではないでしょうか。

(現在では、特許法の改正により、イノベーションを阻害する特許権の行使に対して改正が行われていまして、日本も米国も、数学的なアルゴリズムは、現在では、特許として成立しません。また、大学教授が特許を利用する際に、試験又は研究のために利用する場合は、特許権の効力が及ばないことになっています(特許法69条、米国は判例)ので、ご安心を。)

2011年9月14日水曜日

イノベーションマネジメントのためのSNS「Spigit」

興味深いSNSの登場です。これは、新しいアイデアを収集し、アイデアの共有、評価、管理といった一連のプロセスを可視化できるSNSということです。日本では、電通国際情報サービス(ISID)の提供で、欧米では多数の採用実績をあげているということ。ただ、単なるアイデアの管理のためであるとしたならば、現在のパワポ+メールにSNSが加わるだけかもしれません。かつて企業のナレッジマネジメントがうまくいかなかったように、アイデアを入力する人のモチベーションが上がる工夫が必要でしょう。このようなSNSは、黎明期のシステムだと思いますので、これでブレイクするかは未知数かもしれませんが、顧客と社内のアイデアを情報統制しながら統合的に扱うシステムは可能性を感じます。ただ、このシステムを企業に使ってもらって、企業に入り込み、コンサルタントサービスを提供するのが、ISIDの最終目的かもしれません。このシステムを使えば、誰でもイノベーションなんて都合がいいのかもしれませんが、結局、このシステムを利用した後に出てくる、ISIDのコンサルタントの質にイノベーションは依存するのかも?(2011.9.13 ZDNet Japan

2011年9月6日火曜日

ゲーテ曰く「発明には精神が必要」

特許を重視するプロパテントと呼ばれる時代が過ぎようとしていますが、一方で、スマートフォンによる特許戦争は泥沼化しています。特許は、発明者の努力や発明にかけたコストを模倣から保護するという大きな役割がありながらも、他の利用者を排他的に除外するためイノベーションを阻害するとも言われています。

特許制度ができた頃は、どのような考え方で、その制度が設けられたのかなと思いまして、振り返ってみました。

ルネッサンス期に活躍した芸術家兼発明家といえば、レオナルド・ダ・ビンチかなと思います。しかし、彼は、特許とは無縁だったようです。というのも、彼の活躍した場所が、フィレンツェやミラノで、特許制度が作られた都市国家ヴェネチアではなかったからということです。

それでは、ヴェネチアでは、どのように、特許制度が作られたのか。

それは、ガリレオ・ガリレイが「螺旋回動型ポンプ」を発明した際に、国王に対して、以下のような請願したことが特許の申請であったのでは?と言われています。

「陛下よ。私は、非常に簡単に、費用も少しもかからないで製作可能でありながら、大いに利益のある、水を揚げ耕地に水を引く機械を発明しました。

・・しかし、これは私のものであり、非常に骨を折り沢山の費用を使って完成したその発明が誰でも販売できる共有財産になるのは嫌ですから、うやうやしくお願いいたしますが、どこかの工場でこれを制作、販売する際には、私にお恵をいただけますか。

すなわち、40年(あるいは陛下が思い示す期間)は、私と私の子孫から権利を得た人々以外はだれも、私の新造機械を制作したり、作ったり、使用したりしないように、これを犯す者を罰金に処して、その一部を私に頂ますよう、お願い申し上げます。

そうすれば、私は社会のためにもっと熱心に発明をすることが・・」

ガリレイって、、ずいぶん、独占的な人・・?って思われますかね?僕は思いました・・。子供のころの伝記って、いいことしか書いていないように思いますが、このぐらいの歳になって読むと、偉人もただのビジネスマンかな?

ただ、この懇願書には、特許制度の基礎が、かなり含まれているとも言えるのではないでしょうか。
特別に発明者に恩恵を与える、期間、権利、ライセンスの方法、ライセンス料の徴収、違反の場合の罰金、損害賠償・・。

現在、特許庁が特許出願の書式を定めていなかったら、このような懇願書を、内閣総理大臣や経産省大臣に提出して、許可をとらなければなりません!?

このガリレイの行動に対して、「技術論」の著者のディーゼルは、以下のように言っています。

「特許がなかったならば、言語に絶するほど複雑化する近代文明の組織も生まれ得なかっただろう。何となれば、アイデアの保護だけが無数のアイデアの木の早い成長を可能にしたのである。」

ディーゼルは、おそらく、特許がさらに新しいアイデア、すなわち、新しい特許を生み出す促進材料になっているんだと強調しています。

そして、ディーゼルは、ゲーテの言葉を紹介しています。ゲーテは、文学作品で有名ですが、発明発見についても積極的に発言しているようです。関心が高かったのでしょう。

(若干、難しいですが、私も勉強になるので、翻訳をそのまま記載します)

「木の實は別々の庭でも同時に木から落ちる。しかし同時代の人々、殊に同じ専門に働いている人々に就いて、誰かが他の人を前から知っていて従って故意にその人を出し抜いたのではないかを調べるのは難しいので、一般の生活にある観念的な不快が入り込んでくる。そして高尚な才能も他の世俗の財産のように紛糾葛藤の糧になる」

私の解釈です。美しくない文章ですが、構造を捉えたとして、ご勘弁を。
(発明は人類に同じ恩恵を与えるのが前提であるが、誰かが模倣をしたかの判断は難しいので、財産の争いになる)ということかと。

「発見と発明にあってはなぜその権利に関して複雑な困難な情勢がいつまでも続き、又絶えず起こってくるかを考えることは常にやりがいのある仕事である。

発見には幸運が、発明には精神が必要であって、発見には幸運を、発明には精神を欠くわけにはいかない。

このことは、自然の対象やその性質は、伝統に頼らずして、直接に個人的に認めることが出来ることを明らかにし、それを立証している

しかし、上述のことから、我々が・・・全く新しい独自の認知は、非常に尊重されることを知るのである。だから、誰でも自分を他の多くの人から際立たせているものを棄てようとしないからといって、その人を怨んではならぬ」

私なりの解釈をしますと、発明は、単なる偶然で見つかる発見とは異なって、人間の精神であり、誰にでも価値がある全く新しい独自の認知であるが、これを一般人に開放しないからと言って、その人(ダビンチ)を責めることはできないのではないか、ということかと思います。

世の現実には、貧富の差があり、財産を持っている者と持っていない者がいます。しかし、財産を持っている人が、なぜ、持っていない人に、財産を恵んであげないのですか?と言われることは、社会主義?的には、正しいのかと思います。しかし、資本主義の現実では、寄付したり、可能な範囲でボランティアすることは、当然、奨励されますが、財産を公共財産にすることを強要するのは行き過ぎなのかなと思われます。

発明において、独占権を付与するというのが、人間の精神を保護するためには、現実に適したひとつの形であり、独創性のある発明者が独占するものに対して、認めてあげるぐらい、まわりも余裕を持とうよ、というところでしょうか。

結局、ガリレオの特許は、1594年9月15日に許可され、20年の期間で、侵害があった時は、機械の押収と、300ドゥカットの罰金となったようです。特許の存続期間は、今も20年ですから、このとき定められたまま!?そういう意味では、特許権の力の加減は、まだまだ調整の余地があるかもしれません。

(参考文献:特許の文明史:著:守誠:新潮選書)

2011年8月12日金曜日

GPLライセンスを利用したビジネスの優位性

「いやー、このモジュールはGPLライセンスなので、公開が要件となるから、残念ながら使わないほうが良いのではないでしょうか」

技術部から知財部に、GPLライセンスを適用したプログラム利用の確認がある際に、知財部が回答する一般的な回答が上記になります。

GPLライセンスを適用したプログラムは、それを利用したモジュールのソースコード等の公開が要件になります。通常、ソフトウェア会社は、自分たちで苦労して作ったプログラムを公開するほど、気前が良くないですし、そのプログラムのセキュリティー上、公開が問題になる場合がほとんどです。このような理由から、GPLライセンスを適用したプログラムは、ソフト開発において採用されません。

しかし、最近のソフトウェア会社では、このように認識されているGPLのプログラムを利用して、ビジネスを展開している会社があります。

例えば、Salesforce.comです(この会社って、最近あまり元気ない?)

GPLライセンスで提供されるオープンソースソフトウェア(OSS)を使用した場合でも、自社内使用のみで他社に頒布しなければ、ソースコードの公開義務は免れ得ます。これを利用して、ASP、SaaSの仕組みを構築する際に、OSSを利用したサーバ側のシステム開発を行い、サービスとしてのみ社外に提供するという戦略です。

中小のソフトウェア開発会社も、GPLライセンス等、一見、面倒なライセンスををうまく利用して、ビジネスの優位性を確立していきたいですね。

(参考文献:「産業のサービス化論」へのアプローチ 社会評論社 第3章より)

2011年8月6日土曜日

ソフトウェア特許の意義(GoogleのAndroid特許批判より)

「お先に失礼します。」

他の社員が働いている中で、自分だけが早く帰るのは、どの職場でも、なかなか、難しいですよね。

役割によって、仕事の緊急度合いも違いますし、なにより、本人がすっきり、明日も頑張るためには、早めの帰宅は、大切でしょう。

少し前に流行のドラッカーでも、真摯さ、が大事だと言われています。真摯さとは、それに向きあう、ひたむきな思いと行動だと、私は、理解しています。そうすると、早く仕事を止めることは、真摯さが足りないのではないか、と思われる可能性もありますね。

ひたむきな努力に対して、ご褒美を与える制度の一つとして、特許制度があります。

特許の意義は、ひたむきな努力による研究開発の成果を、世の中に公開することで、その代償として、独占的な権利が付与されるという趣旨です。

じゃあ、ひたむきな努力による研究開発をしていなければ、特許を付与する意義がないか。

ソフトウェア特許は、「ひらめき」が特許になる傾向があり、いわゆる、研究開発部が研究開発を専用の仕事として、時間とコストをかけた成果ではないから特許を付与するのはどうかと思う、という議論があります。

例えば、知恵の輪を解くように、プログラムの独創的なアルゴリズムを生み出すエンジニアにとっては、ある課題を検討してから、3分でアルゴリズムを完成するかもしれません。

このエンジニアが、このアルゴリズムについて、特許をとりたいと望む場合、課題に対して、ひたむきな努力による研究開発の成果がはないから、社会としては、特許を与えるべきではないのではないか、とも考えられます。

「決定力を鍛える」という本で、チェスの世界チャンピオンである、ガルリ・カスパロフさんのセリフです。

「独創性というのは、努力である」、とおっしゃっています。

つまり、独創的なひらめきは、生み出すための時間やコストに関係なく努力の成果ではないかと提案されています。

なにも、研究開発部において、研究しているのみが、ひたむきな努力による研究開発ではないのではないかという発想も生まれます。

独創的なエンジニアは、日夜、様々なプログラミングをして、アルゴリズムを研究しているからこそ、新たな課題に出会ったときに、だれも思いつかない、ひらめきが生まれるのでしょう。
そうすると、「ひらめき」は、形式的には、「ひたむきな努力」が不在のように見える場合もありますが、本課題以外の課題も検討していることで、結局、「ひたむきな努力」の成果物として、出てくるものではないか、と考えます。

ソフトウェア特許自体が、意義があるのか、については、簡単には、結論が出ませんが、形式的な研究開発がされていないからといっても、必ずしも、特許を付与する価値がないとは言い切れないのではないでしょうか。




先日、Googleが、アップルやマイクロソフトに対して、Androidに対する特許の権利行使が、イノベーションの阻止にあたると激しく批判しました。確かに、Googleが支払わなくてはならない特許料でAndroid端末の使用料が上がることはユーザにとっては、もっての外です。僕も、Googleのオープンなビジネス方法には、多くを賛同します。この中で、Googleは、彼らの特許にはインチキ?特許や、疑問符がつく特許も多いのでどうかと思う、と発言されています。


確かに、米国の審査では、ゴルフの打ち方の特許も登録されたということで、ITでも、ちょっと?な特許が多いものだと予想されます。もちろん、ゴルフの打ち方の技術では、特許の付与に疑問の余地があると思いますが、今回は、当然、もう少しITよりの特許技術で、え、こんな単純なものが特許?といったものが散見されたのでは?と思われます。


ただ、自分の経験では、イノベーティブな発明ほど、発明が単純になるという経験が多々あります。つまり、イノベーティブな技術ならば、誰もがその技術を採用しなくてはなりません。ですので、その技術は、非常に単純になる傾向が強いということです。このような発明を、特許請求の範囲や明細書で記載すると、非常に単純な構成であることから、他人がこれを客観的に評価すると、えっ!こんな簡単な構成、特許にしてはダメでしょう・・。と思われてしまうことも多いということです。

特にソフトウェア特許の場合は、機械分野の発明のように、手で触れるような物を作っていないで、機能を結合したアイデアをそのまま発明とすることも多いことから、他の分野の方からは、こんなもので、特許を取らせるべきではない・・とか、単なる思いつきで特許を取らせるべきではない・・というように、誤解される傾向が強いかと思います。


発明は、手品のようだと言われます。


手品の種が明かされてからだと、なーんだ、あたりまえじゃん!・・と言われてしまいますが、その種そのものを生み出すことは、如何に単純な構成であっても、困難な場合が多いということもあります。なぜなら、その手品をみて、驚くわけですから。


そのソフトウェア発明は、考えた末に、イノベーティブな発明の結晶として、そのようにシンプルな構成になっている・・ということも、ソフトウェア特許の意義について、検討する際には、参考にしていただけないかと考えます。


今後のソフトウェア特許の動向に注目していきましょう。

2011年8月1日月曜日

GoogleがIBMから、1000以上の特許を取得

SEO by the SEAのページによると、今回、GoogleがIBMから取得する特許は1030件におよび、これらの特許は「メモリ、マイクロプロセッシング・チップの製造や構造、サーバやルータのコンピュータ・アーキテクチャ分野、リレーショナル・データベース、オブジェクト指向プログラミング、さまざまなビジネス・プロセスなど数多くの特許も含まれている」ということで、ハードウェアからソフトウェアまで幅広く、特許を取得したようです。特許は公開されているものでして、特許権者も誰なのかが公開されてしまいます。ですので、一部のコンピュータ技術の一分野のみの特許を他人から取得した場合は、その会社の今後のビジネス展開をある程度、予測することができます。ですが、今回は、かなり多岐の分野に渡っているようですので、予測は難しそうです(2011.7.28 SEO by the SEA

2011年7月25日月曜日

平成23年度 経済財政白書にて無形資産の重要性が記載

2011年7月22日に、平成23年度の経済財政白書が発表されました。ここでは、第2章の第3節「グローバルな知的経済化への対応」に、「無形資産の重要性」という項目があります。ここで、海外の顧客などのニーズを探り魅力的なブランドをつくることや、専門的な分野で高い能力を持つ人材育成などへの投資拡大を提案しています。無形資産というと、今までは、特許や商標という知財の権利取得が注目されがちでしたが、そんな単純ではない・・ということも徐々に政府に認知されてきました。例えば、中国新幹線で、海外から技術提供を受けていたにもかかわらず、中国が独自の特許を出願していたということが話題になりました。しかし、先日、この高速新幹線が、大惨事の事故に。日本の新幹線は、ほとんど事故を起こしたことがないということを、特長としていました。つまり、特許等の技術力も大事ですが、なによりも、安全な運行をするための人材教育や労働環境の整備、社内規則の徹底などの、安全のためのノウハウである無形資産も、大切な資産であるといえるでしょう。日本は、技術力だけではない無形資産を活かせば、まだまだグローバルでもトップを狙えるのでは(内閣府:年次経済財政報告)。

2011年7月20日水曜日

イノベーションにあわせた特許のカスタマイズ

普通の中小企業で、その会社になくてはならないコア技術の数は、そう多くはないと思います。大企業ならまだしも、事業がそれほど多く無い中小企業では、コア技術が1,2件あれば、充分、商業的な成功が見込めます。

当然、その数少ない1,2件が、他社との競争で負けない差別化要因になっていることが多々あるのではと思われます。そのコア技術について、営業先に提案にいくと、その営業先にアイデアを真似されてしまう・・・。という、ジレンマもあり独占的な権利がほしいと考えるのは当然の流れです。そこで、弁理士に相談して、特許出願をしていく・・・という流れになります。


このように、弁理士に特許出願の相談をして、あとは、出願が完了すれば、あなたの会社の根幹となるコア技術は、充分、守られたのでしょうか?

いえいえ、特許出願後に、第2ラウンドが始まります。


例えば、ITの世界では、現在、サーバが処理を実行してサービスの提供を受けるSaaS(Software as a Service)と呼ばれるサービスと、アプリケーションをスマートフォンにダウンロードして、スマートフォンが実行する2つの場合があります。ある発明が、前者のSaaS型、後者のアプリダウンロード型の両方で実現可能であるとしましょう。この場合には、請求項の記載をうまく書かないと、両方の型を含む請求項になりえません。つまり、発明を実施する態様にバリエーションがあると、充分な権利ではないのです。

例えば、出願時に、後者のアプリダウンロード型しか権利として、請求していなかったにもかかわらず、出願後に、前者のSaaS型で実施している競合他社が出てきてしまった・・。

こういった場合は、どうしましょうか?

優秀な弁理士であれば、最近のITのトレンドを知っているので、依頼された発明は、SaaS型とアプリダウンロード型の両方で実現できると判断して、SaaS型の記載を実施する例として、明細書のどこかにいれているでしょう。

しかし、請求項には記載していないので、競合他社に権利行使はできない。

そんな場合は、出願後に、補正をしたり、そのSaaS型のみの権利を取得するための出願(分割出願)をします。

補正は、出願段階によって、補正内容の制限が厳しいですが、分割出願は、そのような制限が少なく、基本的には、最初の出願に記載した範囲であれば、自由に請求項を記載することが可能です。特に、分割出願は、特許が成立したときにも、行うことができます。つまり、アプリダウンロード型の出願が特許として成立した直後(所定期間のみ)に、分割出願をして、SaaS型の権利を取得することができます。

このようにして、出願後に、他の実施態様で発明を実施していている競合他社に対しても、権利行使をすることができます。このためには、競合他社がどのような実施態様で、発明を実施しているか、出願後に、常にウオッチしていなくてはいけません。また、特許明細書を作成する弁理士さんが、顧客が気がついていないけど、この発明を実施する他の実施態様を明細書に記載しておくことが必要です。

何はともあれ、特許を出せば終わり・・という発想ではなく、その特許を出した発明は、貴社の数少ないコア技術なのですから、このアイデアを、世の中のイノベーションにあわせて、カスタマイズしていって、強い特許にしていく・・ということが何よりも大切と言えるでしょう。

コストをかけて特許をとっても事業と関係ない権利になっちゃうから・・そんな疑問の解決に参考になれば幸いです。

2011年7月19日火曜日

日本弁理士会の特許出願資金援助制度を知っていますか?

日本弁理士会が、個人、中小企業、大学を対象として、特許出願資金の援助制度を行っています。これは、融資ではなく、給付ですので、利用したほうがお得であることは言うまでもありません。しかし、必ず給付をいただけるわけではなく、特許出願する発明の審査が行われます。審査の期間は、1ヶ月程度ですので、現在、出願しようかなと思っている発明を、本制度に申請するとともに、弁理士に明細書の作成を依頼する・・というのが良いかもしれません。また、これ以外にも、通常の特許庁の減額制度、免除制度も併用して使えます。現在、東京都が助成している制度は、対象が外国出願に限られたり、給付額も半額が最大となっていますが、これらの制限がないのが特徴と思われます。(日本弁理士会:特許出願資金援助制度

2011年7月11日月曜日

特許の出願審査請求料が25%近く、引き下げられます!

特許の出願は、出願しただけでは特許権にはなりません。特許庁に対して、審査してくださいお願いしますという請求をします。この時の審査をお願いする手数料が、この度、大幅な値下げになりました!今年の8月1日からの審査請求に対しての適用でして、この8月1日以前に出願していても適用されます。ですので、7月の出願については、審査請求の手続きを同時に行わず、8月1日以降に行って、早期に権利を得たい場合は、適宜、早期審査請求をするのが良いのではないかと考えられます。このコストダウンを機に、企業の特許出願に対する認識も向上させたいですね。(特許庁HP:審査請求料改正のお知らせ

2011年6月29日水曜日

中国 新幹線で国際特許申請

中国鉄道省は、海外からの技術供与を受けて開発し、製造している高速鉄道の車両について、特許の申請手続きを日本やヨーロッパなどで進めていることを明らかにしました。日本やドイツなどの先進国から技術提供を受けていながら、その技術提供を受けている国が、なんで特許出せるの?しかも、国際特許って・・。という疑問がわきますよね。通常、技術提供を行う場合、その提供を受ける側が特許等の知的財産権を取得しないことを条件に、提供側は技術提供します。つまり、事前の契約で、特許を取らないことを約束します。しかし、今回、特許が出願されたということは・・。おそらく、このような契約条項がなかったのだと思われます。確かに、中国の仕事を受注するのは、先進国にとって至上命題だったと思いますから、特許取得を認めない規定がなくてもいいから、中国に技術提供して仕事を受注したい・・。そんな思惑があったのかもしれません。とすると、この新幹線の技術提供では、先進国よりも戦略として進んでいたのは、中国の戦略なのかも?(2011/6/28 NHK NEWSWEB

2011年6月23日木曜日

インターネットアドレス大幅自由化―社名なども可能に

インターネットのアドレスとなるURLですが、現在、「.com」や「.jp」に限られていますが、今後、何でも使える、という状況になりそうです。いわゆる、このURLは、21世紀の商標のようなものといっては、言いすぎでしょうか。企業や個人のアピールのために重要なシンボルとなります。これが自由になるということで、例えば、家具販売の「IKEA」が、「.IKEA」なでのURLを使うことができるということです。なんだか、使用する文字のセンスが問われますよね。例えば、「Socidea.Miyazaki」など、住所の表記のようにも使えますが、「080XXX.5555」など、電話番号みたいに使えたりしますね。ちなみに、Googleは、「www.google.com」、「www.google.com.jp」、「www.google.co.uk」など、他社に取られたくないドメインを、現在でも数多く取得しています。ですので、この自由化で、著名企業が抱え込まなくてはいけないドメイン名が増えてしまうかも?(WALL STREET JOUNAL 6/21

2011年6月21日火曜日

商標登録:「幸せます」 防府商議所が出願、十数社が使用申し出 

その地域で、有名で、かつ、いいイメージの言葉やマークを使って、地元の商品を盛り上げる!こういった地域の戦略は、地域のイメージを明確にアピールできます。

防府市の防府商工会議所が、「幸いです」「うれしく思います」などの意味を持つ山口県の方言「幸せます」を特許庁に商標登録出願し、今月初旬に登録されました。

お土産も、全国的に名物の商品にならないと、地域のお土産を買ったという印象がわきにくく、お客さんはあまり買ってくれないこともありますよね。山口=「幸せます」というイメージで、アメやお菓子、お漬物など、商品の種類に依存せずに、ロゴと呼び名全体で、統一感を持たせることは、それぞれの商品が個別の名称を持つよりも、明確なイメージを顧客に持たせることができるのではないでしょうか。

年間使用料が5000円というのも、ライセンスしやすいですね。戦略を考えた防府市に頑張って欲しいです。宮崎も負けていられない?(毎日新聞:山口版:20011/6/17)。(毎日新聞:山口版:20011/6/17)。

2011年6月11日土曜日

7月2日に、全国で「弁理士の日」記念無料知的財産相談会があります。

この日は、弁理士の日でして、全国で無料の知財の相談会があります。予約等は不要でして、いきなり来て、発明、特許、商標等の相談をすることができます。宮崎は、あまり、相談者がいないため、弁理士さんがお暇になってしまうこともあるようです。勿体無いですので、是非、ご活用ください。宮崎は、市内のホテルメリージュで行われます。県内の遠方からのご相談も大歓迎です。現在、調整中ですが、午後1時からは、所長の小木が担当させていただくかもしれません。是非ともご利用ください!

2011年6月5日日曜日

顧客とのコ・クリエーション


従業員、顧客などを巻き込んで、これらのアイデアを製品に活かすことが、企業を強くする。

「生き残る企業のコ・クリエーション戦略」(徳岡書店)は、価値共創を提唱した、C・K・プラハラード教授の考え方を、ベンカト・ラマスワミ教授とフランシス・グイヤール教授が承継して、現在の企業にあてはめて分析した名著です。現在のビジネスモデルには、既に価値共創が必須となりつつあるのでは・・、ということを認識させます。昔からあるように、従業員を巻き込んでアイデアを製品に活かすというのは、部署を越えて、社員全員で製品アイデアについて考えるということです。それでは、顧客を巻き込むとは、現在においては、どのようなやり方なのか。

「ソフトウェアとはユーザの体験そのものです」

こう言い切るのは、有名なアップルのスティーブ・ジョブズです。アップルは、ソフトウェア、ハードウェアとともに、ヒューマンウェアということを、ビジネスの重要な要素と考えているようです。

アップルは、自らのソフトウェアの開発ツール(SDK)を外部に開放して、世界中の開発者が、自らアップルのソフトウェアを開発することができます。つまり、アップルの開発の喜びさえ、顧客は体験できるのです。そして、関係者である彼らから、様々な意見をもらい、それを新たなアップルの製品開発に反映させています。このような顧客は、時に、熱烈なファンになることが多いので、多くのエネルギーをアップルに費やしてくれて、そのエネルギーから生まれたアイデアを、アップルという会社にフィードバックしてくれるのでしょう。

このように、価値競争のビジネス面での現状の分析を各企業について解説してくれますが、この本で、私が最も価値があると感じたのは、本の最後の章に書かれた、コ・クリエーション型経済の到来という章です。

コ・クリエーションの枠組みを活用すれば、新たな富の想像ができるのではないかということを提唱しています。

つまり、上記の価値共創によれば、リンカーンのようにいうと、

「従業員や顧客(以下、関係者)のための、関係者による、関係者のための企業」をデザインすることが、ビジネスの成功を導くのではないかということになります。

当然、従業員のための企業をデザインすることは、魅力的な雇用となり、そこで働く人が豊かになり、ポジティブなアイデアが生まれる・・という好循環を生み出す可能性があります。

一方、顧客のための企業をデザインするとは、一般の人のための企業をデザインする・・ということになります。これは、企業が企業のためではなく、国民といいますか、一般人のために行動するということになりまして・・・どういうことなのか・・。今の世の中では、想像がつかない気もしますね。。

本の中では、このコ・クリエーション型の未来経済のヒントを述べて、この本を閉じています。このヒントとは、ビル・ゲイツが講演で、アダム・スミスから引用した以下の言葉です。私は、この考え方が、現状の資本主義の限界を変えていく可能性があるような気がしてなりません。

「人間がいかに利己的だと考えられていようとも、人間の本性には明らかに、ある原則が存在する。人間は他人の運命に関心をよせ、他人の幸福を必要とするものだ、という原則である。」


「次の新しい資本主義のシステムは、このように他人の運命に関心を寄せ、それを自分自身の運命に結びつけます。両者の生活を向上させるようなかたちで結びつけるのです。この利己心と他人への思いやりを兼ね備えた混合型システムは、そのどちらか一方のシステムよりも、はるかに多くの人に利益をもたらすでしょう。」

直接的には、この話が、コ・クリエーションの考え方とは、結びつかないかもしれませんが、示唆としては、非常に興味深く感じました。

つまり、企業自身ではなく、他人である関係者を中心とした資本主義に代わるシステムを、人類は構築できる本性があるし、次の時代には、作るべきではないか・・。ということだと思います。

現状の資本主義に限界を感じることもありますね。しかし、これがまだ、発展段階のシステムであると考えると、未来に希望が見えてきます。企業の意識変化が、次の資本主義を作る原動力になるのかもしれません。

2011年6月1日水曜日

特許法改正で中小企業の特許料の減免が10年に拡大

特許法の改正により、中小企業が支払っている特許料の減免期間が拡大しました。通常、特許は、登録されると、年金と呼ばれる特許の維持料金を、毎年支払わなければなりません。しかし、会社の経営状況があまりよくない場合や、開発に対する投資額が大きい中小企業さんは、申請をすることで、この維持料金を国から免除していただけます。この免除の期間が、3年から10年に拡大されました。10年は、特許の存続期間の半分ですから、効果も大きいのかと思います(経済産業省「特許法等の一部を改正する法律案について」

2011年5月25日水曜日

PCT出願、中国企業がパナソニックを抜く(2011年1月~3月)

WIPOによると、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)が935件で、昨年の通年1位のパナソニックを抜いてトップとなったとのこと。PCT(国際特許出願)以外にも、各国に特許を出願する方法がありますので、これでトップでも、世界で出願数が一番多いとは限りません。とはいえ、PCT出願数による判断は、統計が簡単ですので、判断の有効な目安になるでしょう。日本勢も頑張りたいですが、出願数が適正化してきているという意見も聞きます(外部リンク)。

2011年5月23日月曜日

Facebookの「いいね!」が、検索順位に影響を

Facebookでは、記事やブログに対して、「いいね!」というボタンを押すことができます。つまり、この記事がよい、という意思表示を、読んだ人が簡単に入力することができます。この「いいね!」の数が、Bing(マイクロソフトの検索システム)の検索結果に影響をあたえるようになるようです。これで、「いいね!」を押す、モチベーションになるかも?Googleは、まだ対応していないとなると、Facebookユーザは、Bingに移行するのかも?(英文記事は、こちら

2011年5月20日金曜日

SNS時代に企業情報を、どうコントロールするか?

「OPEN LEADERSHIP」日本語の題名は、フェイスブックと書いてありますが、
企業にとってSNS時代のオープンとはなにか?について書かれています。
ツイッターやFacebook・・・流行っていますよね。私も、SNSは自信がなかったこともあり、長く敬遠していましたが、最近はじめてみました。

ご存知のとおり、一人の顧客が自社のサービスや製品のクレームをツイッターでつぶやいたら、その会社の失態は世界中に知られてしまいます。そうすると、企業は一人ひとりの顧客に対して、誠心誠意で付き合わなければ、営業成績が落ちたり、企業イメージが悪くなるといった、大変なことになってしまいます。

これは、ツイッターというツールならではの効果かと思うのですが、人類には、「王のジレンマ」とよばれている、ちょっと似たような事例が遠い過去にあるようです。

印刷機が登場するまでは、教育は、一部の特権階級の人に限られていました。この教会や貴族などの特権階級の人々は、印刷機の登場により一般市民が字を読めるようになると、今の地位に不満を感じて、反抗するのではないかと考えました。つまり、一般市民に、本を読ませ、啓発させると、王は地位を失ってしまうから、印刷機を普及させないほうがよい?ということになります。しかし、人々が本を読み、考える力は強力な欲求であり、王が抑えることができませんから、印刷機の普及を弾圧する力は、かえって、王にとって良くないと思われます。

ツイッターでいえば、ツイッターで自社のことを悪くいうことを弾圧したり、ツイッターそのものを悪く言うのは、効果的ではない・・ということでしょうか。

もちろん、王様だって、人々に本を読ませると、すぐには、王政が覆ることはないでしょう。しかし、知識を得た一般市民が、自分たちの社会を作ったことは言うまでもありません。

それでは、会社は、どうなるのか?

ユナイテッド航空を利用したギター弾きデーブキャロルが、シカゴの空港で、自分のギターを放り投げていることを目にする。当然、ギターは壊れ、修理代1200ドルであった。キャロルがクレームをユナイテッド航空に言っても、とりあってくれない。そこで、キャロルは、このことを歌にして、Youtubeに投稿しました。すると、この再生回数は100万回を超え、ユナイテッド航空の広報担当が彼に謝罪をしたようです。

ツイッターを武器に、一般市民は、大企業を相手に戦うことができるようになりました。そうすると、会社は、どうしたらよいのでしょうか?

常に、誠実に顧客に向かい合うしかない、のでしょう。

つまり、客観的に会社のよくない情報を隠して、オープンになることに避けることに全力を注ぐのではなく、そもそも、その客観的によくない情報を生み出さない企業を目指すということを、この本では、提案しています。

そうすると、企業は、自ら、客観的に顧客にとって良い会社にならざるを得ません。いわゆる、企業論理(ギターは投げたほうが、丁寧に運ぶより従業員の手間がかからず、短時間で運べる)・・というものよりも、顧客論理(大切なギターだから、丁寧に運ぶ)が優先される会社になります。自浄するといえばよいでしょうか。

SNSにより、顧客にとって良い会社が増える・・ようにも思われます。


SNS時代に企業情報を、どうコントロールするか?

それは、企業情報をコントロールしなくても、何を言われても、顧客信頼度を失わない態度と、姿勢なのだと思われます。

(OPEN LAEDERSHIP:「フェイスブック時代のオープン企業戦略」(著シャーリーン・リー:「朝日新聞出版」」)は、非常に参考になる本かと思いますが、SNSを体験してから読まないと、感覚として、理解が難しいかなと思います。しかし、上記の紹介は、ほんの一部であり、今の時代に情報をオープンにするとは、どういうことなのか、この状況でのリーダーシップのあり方は?という点で、数多くを教えてくれるように思いました。)

2011年5月4日水曜日

アイデアが生まれるとき パート2:知識創造の4つのモード

「知識創造の方法論」より引用 東洋経済新報社 著:紺野登氏、野中郁次郎氏

アイデアが生まれるとは、どういうふうに脳が活動するのでしょうか?パート1に引き続き、右脳、左脳の考え方から経験的に検証してみたいと思います。

技術経営(MOT)の分野で、世界的な第一人者と呼ばれている、野中郁次郎先生は、知識創造が生まれる一般原理というものを提案されています。

先生の提案は、私が以下に説明する以上のものであることは、言うまでもありませんが、一つの拙い解釈及び拡張として、ご覧いただければ幸いです。

第一に、ニュートンがリンゴを落ちるのを見て、「力は、質量×加速度と等しい」というニュートンの第二法則を見出すという、知の創出があります。これは、暗黙的に、重い物が落ちると、その重さに比例して、加速度が増す・・という経験的な現象についての知(暗黙知:右脳の知識)から、「力」という概念を導き出し、言語からなる論理及び、数式からなる論理(形式知:左のうの知識)を導き出すことと言えるでしょう。

これを、「知の表出化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、暗黙の彼方にある概念を追求することで表出される知ということで、哲学では、「プラトン」の考え方に相当します。

第二に、ニュートンの第二法則を利用して、コペルニクスが地球の自転や公転についての知を創出しました。これは、すでにあるニュートンの第二法則という形式知に対して、形式知を体系的に結びつけて、新たな形式知(太陽中心説:地動説)を生み出しました。

これを、「知の連結化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、表出化された概念を再構成していくプロセスで、分析の知であり、哲学では、「デカルト」の考え方に相当します。

第三に、職人の技能やスポーツにおいて、やり方を言葉で聞いて、理屈では分かっているけど、身体的にそれができないことがあると思います。この場合、理屈である形式知から、身体的にその技能を取り入れようとする暗黙知を生み出すという行為になります。

これを、「知の内面化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、表出化された概念を内面化(暗黙知化)していくプロセスであり、哲学では、「デューイ」の考え方に相当します。

第四に、言葉で伝えなくても、職人やケンシロウのように、師匠が弟子に技能を継承していくような、暗黙知の共有、獲得、増幅という知の創造があります。企業におけるOJTもそうで、理屈を言わなくても、一緒に作業をすると、暗黙的に伝わる知識です。

これを、「知の共同化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、暗黙知から暗黙知を共体験して伝えるプロセスで、哲学では、「西田幾多郎」の考え方に相当します。

先生は、これらのモードが図に示すように、循環的に入れ替わって、さらに、螺旋的にも、知識が創出されると提案されています(SECIモデル)。


実際には、これらの知の創造モードの一つ一つが複合的に用いられて、想像される知識が、強力なアイデアになることが多いような気がします。

長々と説明してきましたが、本題に戻りましょう。

我々が、一般的に、アイデアが生まれる!と呼んでいるのは、どの知識創造のモードに合致すると思いますか?

私は、パート1で説明した、右脳と左脳の出会いというのは、暗黙知から形式知への表出化が、アイデアを生む!と言っているのではないかと思います。

つまり、第一のプラトンの考え方ですね。

そうしますと、アイデアを創出する(形式知を表出化する)ためには、バックボーンとなる、たくさんの暗黙知がなくてはなりません。

ですから、いろんな経験をしている人がアイデアが豊富だったりしますよね。子供のうちも、机にむかって勉強ばっかりやっていないで、外で思いっきり遊んでいたほうが、後に大成するることもあるでしょう。それは、このように豊富な暗黙知が、イノベーティブなアイデアを創出すると言えます。

まずは、ガッツリ遊んで、いろんな経験をするのが、アイデア創出に大事なのかも?

もちろん、必要なアイデアに、あまりにも関係ない経験をしても暗黙知の蓄積にはならないかもしれません。

しかし、一見、関係ないものを、素人的に素朴に結びつけることで、イノベーションに結びつくことも多々あるようです。したがって、アイデアを生みたい分野の、ちょっと広めの周辺知識(暗黙知)や現在の時代の流れに関する暗黙知を持っていることが、アイデア創出をうまくやるコツかも知れませんね。

これで、アイデアが生まれるときの脳の活動については、終わります。

次回は、このような個人のアイデアを、経済活動を生み出す主体である企業がどのように利用すべきかについて、考えていきたいと思います。

2011年4月20日水曜日

PCT出願を利用した振り込み詐欺


「貴社のPCT出願を、WIPD(世界知的所有権データベース機関)が更新登録をしました」

「つきましては、下記の口座へお振込をお願いします」

PCT出願の国内移行期間が過ぎたタイミングで、上記の請求書が送られてきます。

この請求書は、国際公開された内容をコピーしているので、出願人、出願番号や公開番号、発明の要約などが正確に記載されており、英語で記載されていることも手伝って、WIPO(世界知的所有権機関)の公式な文章と見間違えます。

請求の根拠としては、「RENEW」に対する代金を支払うように記載されており、商標の国際出願(マドプロ)との混乱を狙ったものなの?でしょうか。

WIPOのWebサイトには、このWIPDのように、WIPOを装って出願人に請求する団体についての一覧が記載されています。

PCT出願の後に、更新登録という名目の請求はあり得ません。

おかしいな?と感じたら、是非ともこのページを確認してみてください。

2011年3月16日水曜日

アイデアが生まれるとき パート1:右脳と左脳の出会い

某清涼菓子のコマーシャルでは、人が、トイレに入っているときや、オフロに入ったとき、バスに乗ったときなどに、アイデアが思いつきますが、会議室ではアイデアが思いついていません。

これは、なぜなのでしょうか?

科学的に実証されているわけではないのですが、僕らは、経験的に、頭の使い方を、右脳、左脳で考える・・というふうに言うことがあります。右脳を使うとは、創造的、情緒的な考え方で、これに対して、左脳とは、合理的、論理的な考え方です。

人は、仕事では、左脳を使うことが求められます。仕事を創造的、情緒的な統一性のない判断で進めることは困難です。したがって、自分の考え方を合理的にして、客観性を持たせるために、左脳を使って仕事を行います。

ですので、月曜日の朝は、脳を仕事モードにするために、左脳を使うことに精一杯です。これと同じことが、会議室に人が来ると起こります。会議の場では、人は、合理的かつ客観的に意見を述べなくてはいけません。したがって、会議室でも左脳が活発に動いていると考えられます。

それでは、会議室では、左脳が活発に動いているにもかかわらず、アイデアが生まれないのはなぜか?

我々人間は、右脳と左脳を同時に両方使うことはできない。
このことを意識して、アイデアは、右脳(Rモード)と左脳(Lモード)が出会うところで生まれる。

このように提案しているのは、Andy Huntさん( 「Programatic Thinking and Learning」 (オライリージャパン出版))です。彼は、人が所謂、その分野における達人になるには、右脳、左脳の上手な使い方にヒントがある、と提唱しています。つまり、会議室では、左脳だけ使っているから、アイデアが生まれませんが、トイレやバスの中では、ほっとひと息着いて、右脳を使い始めるため、右脳と左脳が出会って、アイデアが生まれるのでは?ということです。

20世紀の僕らは、左脳を使うことがビジネスで成功したり、出世するポイントだったように思います。しかし、21世紀では、左脳だけでビジネスを成功させることが難しくなってきたといえます。

GoogleやAppleのビジネスモデルは、非常に創造的なビジネスモデルであるといえるでしょう。つまり、21世紀のビジネスのポイントは、右脳の使い方と、右脳で想像したことや感じたことを、左脳で分析する能力にあると言えます。

しかし、上述のように右脳と左脳は、同時に動かすことができません。
人は、論理的な思考が始まると、論理的な考え方に集中し、同時には、創造的、情緒的な考え方ができないものです。

それでは、アイデアを生むには、どのように右脳と左脳を使えば良いのでしょうか?

この答えは、技術経営の分野で世界的な権威である、野中郁次郎氏が提唱するSECIモデルというものに、ヒントがあるように思います。

パート2に続きます。




2011年3月1日火曜日

人を動かす交渉力とは?


「私も数々の国際的な交渉をして来ましたが、アンジェリーナ・ジョリーのような人は一人もいません。」

先日、交渉論に精通した知財戦略の専門家である、秋沢伸哉先生の講義を聴きに行きました。
平日の昼間、2時間の講義にも関わらず、250人がびっちり埋まっていました。

「皆さんが連想される、交渉人っていうのは、いわゆる、テレビや映画などのイメージで、米倉涼子さんとか、アンジェリーナ・ジョリーのような人が、ミッション・インポッシブルのトム・クルーズみたいな、全身黒で、スタイルバッチリの服を着ていることを想像しますよね?」

「でも、ハードネゴシエーターが集まると言われる国際会議では、ふくよかで年配のおばちゃんや、私のような普通のオジさんしかいません。」

そりゃ、そうですよね。

僕の思っていた、交渉人のイメージは、いわゆる、ハードな天才交渉人で、どんな意見を言っても、合理的にねじ伏せてしまう・・そんなイメージでした。ですので、やっぱり、米倉涼子さんの外見イメージで、頭の中は、勝間和代さんがバッチリかな・・。

でも、そんな人ばかりが、国際会議に集まってきて、国の代表が、論理の戦いを繰り広げて、交渉をしている・・・。ある意味ではそういう一面もあるかもしれませんが、それよりも、交渉において大事なことがあるのでは?ということは、直感的にわかりますよね。

秋沢伸哉先生の講義では、「交渉とは、一般的には、立場を駆け引きするものと捉えがちであるが、交渉とは、お互いで問題解決する意思決定を行うもの」ということ。

「だけど、交渉相手と一緒に問題解決するには、相手のことを大変、深く理解しなければなりません」ということでした。

私も含め、日本人は、どちらかというと、交渉が苦手で、ソフト的な解決が多いように思います。つまり、交渉相手との関係を重視しすぎて、交渉を譲歩しすぎて終わってしまう傾向がありませんか?

しかし、このようなソフト的な解決は、譲歩しすぎていますから、交渉は失敗ですし、その後、相手をよく思わない結果となるでしょう。ですので、思い切って、「それは、のめません」と断ってみますか?そして、相手のことをよく理解する。自分のこともよく理解してもらう。そうすると初めて、交渉相手が、一緒に問題解決をするパートナーになるかもしれませんね。

先生は、モスクワの権威の方に、北方領土の問題について質問したそうです。

「時間はかかるけど、40年後には、日本の思うとおりになるよ。日本人は、誠実です。その誠実さで、何年もかけて交渉して、ロシア人に理解してもらえれば、日本の考える通りになるのではないか」「日本人というのは、対立軸だけで物事を考えない。だから社会が複雑だが、これからの時代はこういう考え方こそ、世界が求めているのではないか。」


もちろん、こんなことを言われて、傲慢になることはできませんが、日本人って、これから世界をリードする交渉人になれるかも?


(講義の主たる内容は、自信があるのですが、若干、正確さにかけるところがあるかもしれません。気がつかれた方は、コメントをいただけると幸いです。)


(写真は、歌川広重の藤枝人馬継立: 昔から役人さんとの賃金交渉は大変だったのかな・・。)


2011年2月16日水曜日

Facebookに対抗?SNSでの顔認識技術


SNSで友だちを探すときに、アップロードした自分の顔写真を認識して、友達を紹介してくれる・・・・。というと、Facebookの技術だと思いますよね。

それが、ちがうんです。Googleがちゃっかり欧州で特許出願していたことが、公開されました。

確かに、Googleの写真整理ソフト「Picasa」は、SNSではないですが、SONYの顔認識と同じような技術で、顔認識を行った結果、写真を自動分類してくれます。この技術は、これのSNS版といったところでしょうか・・。

この記事によると、画像認識による顔認識は、Googleが2009年ごろに行っていましたが、個人のPrivacyへの配慮から、この運用や開発を遅らせていたようです。

ですが、時代は進み、Facebookによる、実名公開と顔写真掲載・・という世の中になり、Privacyはある意味そっちのけ・・。こんな展開は、Googleも予想外だったのでは?

とはいえ、Googleも特許をしっかり出していたわけですから、肝心なところは、おさえていますよね。

2011年2月5日土曜日

優先権証明書の提出が省略できる制度


特許を外国に出す際には、最初に出願した国での出願日と、同等の利益が認められることがあります。これは、平たく言うと、他の国もその国で出願したと同じになる・・ということです。特許は新規性が問題になるので、出願日は早いほうがよく、先に出した出願と同じ日に出したことになれば、特許になる確率が高まります。

例えば、日本で最初に出願した後に、中国、EP、インド・・と特許を出す際には、この制度(優先権制度といいます)を利用したほうが、よいでしょう。

ですが、この手続がちょっと面倒です。

といいますのも、手続きの一つとして、日本国特許庁が発行する証明書(優先権証明書と呼ばれます)を、紙で取り寄せて、外国に送付しなければなりません。この証明書は、立派な帯がしてあり、見た目は格好いいのですが、1通あたり、1100円かかります。しかも、ちょっと厚めで、各国へDHLなどでの郵送コストがかかります。

しかし、このインターネット時代!のおかげで、この証明書は、出願人が送る必要はなくなり、各国の特許庁間で、書類のやりとりをしてくれることになりました。

これは、優先権書類デジタルアクセスサービス(通称、DAS)と呼ばれているもので、各国で優先権の証明データ(優先権データ)をやり取りしてくれる形です。これは、日本国特許庁に対して、アクセスコードというものを、請求して、このアクセスコードさえいただければ、インターネットのWIPOのページで、各国の特許庁と証明書を共有してくれ、とお願いするだけで、手続きが終わります。しかも、無料なんですよね。

せっかく、各国が税金をかけて作られた良い制度ですから、社内の知財コストと手間削減に利用したいですね。

2011年1月14日金曜日

技術を公開する社会的貢献

特許は独占権で、他人が全く利用できなくなるのだから、社会にとって害悪では?

私は、この業界に来る前は、ITエンジニアをしていましたが、その時の特許に対する印象はこうでした。

それでは、なぜ、国などの行政は、税金をかけてでも特許庁を虎ノ門に建てて、特許権者を保護するのでしょうか?(虎ノ門にたてるのは別の理由ですかね・・。)
そうなんです。

特許を出した後に、その技術情報は、公開されるんですよね。ですので、その技術は、形式的には、パブリックドメインのものになります。
おっと、しかし、騙されてはいけません。その技術が、特許権になると・・。
当然、その特許権者に許可をもらわないと、使用ができなくなります。

つまり、特許権がとられなくて、技術が公開されれば、最も社会貢献になる?わけです。
2009年の出願数35万件(ほとんどが公開されるとしましょう)において、特許登録件数は19万件です。つまり、この差の16万件は、独占権のない新規技術の公開情報と考えられます(厳密には、たいしたことない技術もあるのかもしれませんが)。
とすると、かなりの新規技術が独占権が付与されずに、無料公開されており、特許制度自体は、社会の貢献になっている?と考えて良いのかなと思われます。

これとは逆に、一度、公開されてしまった技術は、特許を取ることができません。
いわゆる、新規性がない・・ということになり、その人が発明していないと考えられるからです。

ですので、特許をとりたい技術を、インターネットで公開してしまえば、理論的には、他社が権利を取ることができないのです。
そのため、他社に特許をとらせないため、特許出願をしますが、自らも特許権をとらない・・という会社があります。

どういう事かといいますと、特許の出願をして、その後、その技術が特許庁により公開されます。これで、この特許出願は、目的を達したとして、自らが特許権を取得するための余計なコスト(その特許の審査請求料や、特許取得のための料金)を払わない・・という会社があります。

たしかに、この方法で、他社の権利化を阻止することができますが、当然ながら、自ら権利を取得することはできません。

それなら、そもそも、特許出願しなくても、よかったのでは?と思いますよね?これは、インターネットがない昔、世の中へ技術を公開するために、雑誌に載せるなどの手間を考えれば、特許の出願をしてしまうほうが、簡単だったという慣習によるものでした。

しかし、今は、インターネットの世の中ですから・・。
公開のみを目的とした場合は、例えば、以下のようなサイトが利用出来るでしょう。

特許の公開サイト IP.COM 発明協会
意匠の公開サイト DESIGNPROTECT

本当に自社が特許権を取りたい技術のみを特許出願する。
そして、他社の権利化を阻むために、技術を公開するのみの目的であれば、上記のようなサイトを利用する。

これが、今後の適切な知財マネジメントなのではと考えます。

2011年1月1日土曜日

自己革新とは

011年になりました。
明けまして、おめでとうございます。

今年のソシデアは、ホップ・ステップ、ジャンプの、「ステップ」の段階に移れればと思っています。今年もよろしくお願いします。

今日は何だか、元気で朝早く起きてしまいました。

「イノベーションについて考える人、その人自身が自己革新的な考え方が出来ていなければ、会社に対してイノベーションを主導できるわけがない」

昨年、最も印象に残った言葉で、東大の妹尾先生が、このようなニュアンスをおっしゃていました。

その人自身が自己革新的な考え方が出来ている、とは、どういうことなのでしょうか?

自己革新とは、私たちの馴染みがあるところでは、アーティストが実現していたことなのではないかと思っています。彼らは、自己革新の表現者であることが存在意義であるとも言えます。

例えば、ベートーベンは、交響曲3番、5番、9番と、飛躍的に革新的な曲を作曲されました。これは、過去の先輩たち(モーツァルトさんやバッハさん)の偉業を継承しながら、自分自身の中で音楽と向い合って、音楽で表現できるもっと深いもの、を探し続けて、もがいて出した結果が、誰も聴いたことがない革新的な音楽を生み出したように思います。

したがって、イノベーションとは、過去のその分野における偉業を継承し、認識しながら、自分自身がさらに、その分野において、その分野の可能性の限界まで見つめて、もがいて出した結果である、とも言えるのではないでしょうか。

これをあてはめると、自分の場合には、従来の知的財産業務を承継し、認識しながら、自分自身がさらに、企業経営において、その可能性の限界まで見つめて、新たな知的財産マネジメントの方法を見つけること、が、ソシデアの責務であり、ソシデアに当てはめた自己革新的な考え方なのでは・・と思っています。

すぐに、自己革新的な考え方で、サービス提供ができるのは難しいかもしれません。しかし、少なくとも、そのような心構えで、知財マネジメントの可能性について、取り組んでいきたいと思います。