2011年7月20日水曜日

イノベーションにあわせた特許のカスタマイズ

普通の中小企業で、その会社になくてはならないコア技術の数は、そう多くはないと思います。大企業ならまだしも、事業がそれほど多く無い中小企業では、コア技術が1,2件あれば、充分、商業的な成功が見込めます。

当然、その数少ない1,2件が、他社との競争で負けない差別化要因になっていることが多々あるのではと思われます。そのコア技術について、営業先に提案にいくと、その営業先にアイデアを真似されてしまう・・・。という、ジレンマもあり独占的な権利がほしいと考えるのは当然の流れです。そこで、弁理士に相談して、特許出願をしていく・・・という流れになります。


このように、弁理士に特許出願の相談をして、あとは、出願が完了すれば、あなたの会社の根幹となるコア技術は、充分、守られたのでしょうか?

いえいえ、特許出願後に、第2ラウンドが始まります。


例えば、ITの世界では、現在、サーバが処理を実行してサービスの提供を受けるSaaS(Software as a Service)と呼ばれるサービスと、アプリケーションをスマートフォンにダウンロードして、スマートフォンが実行する2つの場合があります。ある発明が、前者のSaaS型、後者のアプリダウンロード型の両方で実現可能であるとしましょう。この場合には、請求項の記載をうまく書かないと、両方の型を含む請求項になりえません。つまり、発明を実施する態様にバリエーションがあると、充分な権利ではないのです。

例えば、出願時に、後者のアプリダウンロード型しか権利として、請求していなかったにもかかわらず、出願後に、前者のSaaS型で実施している競合他社が出てきてしまった・・。

こういった場合は、どうしましょうか?

優秀な弁理士であれば、最近のITのトレンドを知っているので、依頼された発明は、SaaS型とアプリダウンロード型の両方で実現できると判断して、SaaS型の記載を実施する例として、明細書のどこかにいれているでしょう。

しかし、請求項には記載していないので、競合他社に権利行使はできない。

そんな場合は、出願後に、補正をしたり、そのSaaS型のみの権利を取得するための出願(分割出願)をします。

補正は、出願段階によって、補正内容の制限が厳しいですが、分割出願は、そのような制限が少なく、基本的には、最初の出願に記載した範囲であれば、自由に請求項を記載することが可能です。特に、分割出願は、特許が成立したときにも、行うことができます。つまり、アプリダウンロード型の出願が特許として成立した直後(所定期間のみ)に、分割出願をして、SaaS型の権利を取得することができます。

このようにして、出願後に、他の実施態様で発明を実施していている競合他社に対しても、権利行使をすることができます。このためには、競合他社がどのような実施態様で、発明を実施しているか、出願後に、常にウオッチしていなくてはいけません。また、特許明細書を作成する弁理士さんが、顧客が気がついていないけど、この発明を実施する他の実施態様を明細書に記載しておくことが必要です。

何はともあれ、特許を出せば終わり・・という発想ではなく、その特許を出した発明は、貴社の数少ないコア技術なのですから、このアイデアを、世の中のイノベーションにあわせて、カスタマイズしていって、強い特許にしていく・・ということが何よりも大切と言えるでしょう。

コストをかけて特許をとっても事業と関係ない権利になっちゃうから・・そんな疑問の解決に参考になれば幸いです。

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