2011年5月4日水曜日

アイデアが生まれるとき パート2:知識創造の4つのモード

「知識創造の方法論」より引用 東洋経済新報社 著:紺野登氏、野中郁次郎氏

アイデアが生まれるとは、どういうふうに脳が活動するのでしょうか?パート1に引き続き、右脳、左脳の考え方から経験的に検証してみたいと思います。

技術経営(MOT)の分野で、世界的な第一人者と呼ばれている、野中郁次郎先生は、知識創造が生まれる一般原理というものを提案されています。

先生の提案は、私が以下に説明する以上のものであることは、言うまでもありませんが、一つの拙い解釈及び拡張として、ご覧いただければ幸いです。

第一に、ニュートンがリンゴを落ちるのを見て、「力は、質量×加速度と等しい」というニュートンの第二法則を見出すという、知の創出があります。これは、暗黙的に、重い物が落ちると、その重さに比例して、加速度が増す・・という経験的な現象についての知(暗黙知:右脳の知識)から、「力」という概念を導き出し、言語からなる論理及び、数式からなる論理(形式知:左のうの知識)を導き出すことと言えるでしょう。

これを、「知の表出化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、暗黙の彼方にある概念を追求することで表出される知ということで、哲学では、「プラトン」の考え方に相当します。

第二に、ニュートンの第二法則を利用して、コペルニクスが地球の自転や公転についての知を創出しました。これは、すでにあるニュートンの第二法則という形式知に対して、形式知を体系的に結びつけて、新たな形式知(太陽中心説:地動説)を生み出しました。

これを、「知の連結化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、表出化された概念を再構成していくプロセスで、分析の知であり、哲学では、「デカルト」の考え方に相当します。

第三に、職人の技能やスポーツにおいて、やり方を言葉で聞いて、理屈では分かっているけど、身体的にそれができないことがあると思います。この場合、理屈である形式知から、身体的にその技能を取り入れようとする暗黙知を生み出すという行為になります。

これを、「知の内面化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、表出化された概念を内面化(暗黙知化)していくプロセスであり、哲学では、「デューイ」の考え方に相当します。

第四に、言葉で伝えなくても、職人やケンシロウのように、師匠が弟子に技能を継承していくような、暗黙知の共有、獲得、増幅という知の創造があります。企業におけるOJTもそうで、理屈を言わなくても、一緒に作業をすると、暗黙的に伝わる知識です。

これを、「知の共同化」と呼び、知識創造の一つのモードであると提案しています。これは、暗黙知から暗黙知を共体験して伝えるプロセスで、哲学では、「西田幾多郎」の考え方に相当します。

先生は、これらのモードが図に示すように、循環的に入れ替わって、さらに、螺旋的にも、知識が創出されると提案されています(SECIモデル)。


実際には、これらの知の創造モードの一つ一つが複合的に用いられて、想像される知識が、強力なアイデアになることが多いような気がします。

長々と説明してきましたが、本題に戻りましょう。

我々が、一般的に、アイデアが生まれる!と呼んでいるのは、どの知識創造のモードに合致すると思いますか?

私は、パート1で説明した、右脳と左脳の出会いというのは、暗黙知から形式知への表出化が、アイデアを生む!と言っているのではないかと思います。

つまり、第一のプラトンの考え方ですね。

そうしますと、アイデアを創出する(形式知を表出化する)ためには、バックボーンとなる、たくさんの暗黙知がなくてはなりません。

ですから、いろんな経験をしている人がアイデアが豊富だったりしますよね。子供のうちも、机にむかって勉強ばっかりやっていないで、外で思いっきり遊んでいたほうが、後に大成するることもあるでしょう。それは、このように豊富な暗黙知が、イノベーティブなアイデアを創出すると言えます。

まずは、ガッツリ遊んで、いろんな経験をするのが、アイデア創出に大事なのかも?

もちろん、必要なアイデアに、あまりにも関係ない経験をしても暗黙知の蓄積にはならないかもしれません。

しかし、一見、関係ないものを、素人的に素朴に結びつけることで、イノベーションに結びつくことも多々あるようです。したがって、アイデアを生みたい分野の、ちょっと広めの周辺知識(暗黙知)や現在の時代の流れに関する暗黙知を持っていることが、アイデア創出をうまくやるコツかも知れませんね。

これで、アイデアが生まれるときの脳の活動については、終わります。

次回は、このような個人のアイデアを、経済活動を生み出す主体である企業がどのように利用すべきかについて、考えていきたいと思います。

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