2014年12月21日日曜日

マーケットインとプロダクトアウト(マーケと知財のイノベーション③)

「自分たちが良いと思う商品を売れば市場を獲得できる」

この考え方は、商品ありきで市場を考える「プロダクトアウト」の考え方と言われている。

アップルのイノベーション戦略は、このプロダクトアウト型ともいわれており、最近の経営者は、「顧客が望むものを作れば売れる」という「マーケットイン」の話は、もう時代遅れではと考える場合もあるようだ。果たしてそのような二元論で売れる商品の議論ができるのであろうか。
 
 日本には昔から優れた商品を創り出す伝統工芸が多く存在していた。例えば、伊万里焼の白磁は、1659年(万治2年)頃からヨーロッパや中東に輸出されはじめ、ドイツのマイセン(ヨーロッパ初の白磁)が登場するまで、ヨーロッパに輸出されていた。この成功が佐賀藩を潤おし、さらに、1878年パリ万国博覧会に日本の美術品(浮世絵・工芸品等)が出典されジャポニズムがヨーロッパで花開いた。
 すなわち、江戸時代から日本では伝統的によい作品・製品を創り出す技術力や概念があったのである。
そして、時代は移り、第二次世界大戦終了後、物が無い時代の日本において、当然、物質不足であるから、「モノを作れば売れる」「良いモノを作れば売れる」といった考え方が主流をなした。この考え方(プロダクトアウト)が会社において現在でも継承され、商売の基本的な考え方になっている。

しかし、時代は進み、1970年代中ごろより、市場の成熟化・飽和化や技術の高度化を迎え、いたるところで物質が供給過剰に陥り「良い商品を作ればよい」という考え方に、ほころびが見られ始めた。売上を確保したいにも拘らず、売れないという現実が企業に突き付けられるのである。企業は、このギャプを埋めるべき「顧客視点や顧客ニーズ」という考え方を導入し始めた。この考え方が「マーケットイン」である。

それでは、現在「プロダクトアウト」の考え方はいらないのかと問われれば、新商品開発には、「シーズ開発」(技術力や研究開発力はビジネスの種)として必要である。技術力や研究開発力によって、今まで市場に存在しなかった商品を開発し大ヒットした例は沢山ある。この技術力のつけた「シーズ開発」に加えて、さらに、「ニーズ開発」することによって、今まで市場に存在しなかった商品を開発し、大ヒットすることができるのである。

本来のマーケティングとは何か。それは、「シーズ開発」+「ニーズ開発」ということである。「プロダクトアウト」、「マーケットイン」という2者択一で考えるのではなく、どちらもあって始めて、成功するということである。

商売で成功したいならば、まずは、未だに満たされていない消費者ニーズである未充足ニーズの開発を始め、次に、そこから出てくる未充足の消費者ニーズ(夢・希望・期待・願望等々)を、技術的に解決するためのシーズ開発に活かすことが求められるのである。

物質で満ち足りている今日では、本当の未充足ニーズが見つかれた場合、それは、要求水準が非常に高い場合が多い。したがって、企業は、商品の技術レベルを上げるようたゆまぬ努力(シーズ開発)を行う必要があるのである。

宮崎日日新聞 平成26年4月17日 経済欄 掲載コラム 

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