2016年6月24日金曜日

商売の要を守る知的財産 (消費者は2度評価する!)

左が虎屋の上田社長で、真中が浜元社長
「消費者は商品を2度評価します。買う前の評価と、買った後の評価。この評価をいかに上げるかが勝負。」

先日、延岡の老舗菓子屋「虎屋」の上田社長と会食をしていたところ、社長から出た言葉です。これは、社長のオリジナルの考え方ではなく、「カビキラー」「トニックシャンプー」といったロングセラー商品を理論的に開発している梅澤伸嘉先生のCP理論という考え方です。私も以前からこの考え方は商品開発に有益と感じており、社長と意気投合しました。

「お、この商品を買ってみたい」と顧客に思わせる魅力的な商品を開発することを、コンセプト(CPC)開発と呼びます。そして、買った後に、「この商品、買って良かった」と顧客に思わせる商品は、パフォーマンス(CPP)が強い商品といいます。つまり、いかに、良いコンセプトを開発して、人に興味を持ってもらい、購入いただいて、いい商品だ!と実感させて、購入のリピートや口コミを促す、これが良い商品開発か否かの決め手になるという考え方です。

虎屋さんは、高千穂神話を由来とする「破れ饅頭」や、秋の延岡、鮎やなの落ち鮎をモチーフとした「鮎やな餅」など、延岡や宮崎の文化を商品コンセプトとして、菓子の商品開発をされています。延岡や宮崎の文化に興味があって、かつ、菓子を求める顧客が、この虎屋さんの思いを表現したネーミングや、パッケージデザインを見て、最初の購入をします。そして、実際に、菓子を食べてみると、優しく、美味しい味わいであった(良いパフォーマンス)ことを感じて、再度、リピート購入をしたり、知人に口コミするという循環を生み出しているといえるでしょう。

そして、このコンセプトとパフォーマンスを知的財産権で守ると、強固な商売ができるのです。よく、弊所の事務所に来られて、こういった発明や商品を開発したが、どこで知的財産権を取得すればよいか、わからない、という相談を受けます。しかし、これは、守りのみを意識して、攻めを充分に意識できていないように思います。

つまり、その商品を消費者が買う決め手はなんでしょうか?コンセプト開発された、魅力的なネーミングなのか、パッケージのデザインなのか、それとも、商品のパフォーマンスを担保する新しい技術なのか?「ここだけは、絶対、他人に真似されたくない」と強く思われる、その特徴こそが、知的財産権を取得すべきところです。人に真似されたくないネーミングであれば、商標権が取れますし、パッケージデザインであれば、意匠権が取れます。誰も思いつかない新しい技術であれば、特許権や実用新案権が取れます。これらは権利を取得すれば、日本全国で貴社しか使えなくなります(意匠権や特許権であれば20年間、商標権であれば更新すれば永遠に)から、上記のコンセプトやパフォーマンスは、日本全国であなただけのものとして、独占できるのです。

逆に、このようなCP理論を意識したビジネスを行なっていても、他人に商標権や特許権等の知的財産権を取得されてしまうと、そのビジネスを差し止められたり、売上の一部を権利者に支払う必要が出てきてしまいます。特に、弊所には、地方の中小企業が、都会の知的財産権の権利者から警告状を受けて、商品のネーミングの変更をさせられたり、商品の販売中止となるトラブルの相談があります。商品開発とともに、これだけは真似されたくないと感じられる特徴については、いま一度、知的財産権の取得について、検討してみることをお薦めします。


写真の浜元社長は、自転車の発明家で、日本・中国・台湾で登録された特許を株式会社IPブリッジ社に譲渡して大手企業へのライセンスを我々と試みています。浜元社長が先日テレビ出演したところ、偶然、上田社長と小学校の同級生というがわかり、48年ぶりの再会をいたしました。

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