2011年1月14日金曜日

技術を公開する社会的貢献

特許は独占権で、他人が全く利用できなくなるのだから、社会にとって害悪では?

私は、この業界に来る前は、ITエンジニアをしていましたが、その時の特許に対する印象はこうでした。

それでは、なぜ、国などの行政は、税金をかけてでも特許庁を虎ノ門に建てて、特許権者を保護するのでしょうか?(虎ノ門にたてるのは別の理由ですかね・・。)
そうなんです。

特許を出した後に、その技術情報は、公開されるんですよね。ですので、その技術は、形式的には、パブリックドメインのものになります。
おっと、しかし、騙されてはいけません。その技術が、特許権になると・・。
当然、その特許権者に許可をもらわないと、使用ができなくなります。

つまり、特許権がとられなくて、技術が公開されれば、最も社会貢献になる?わけです。
2009年の出願数35万件(ほとんどが公開されるとしましょう)において、特許登録件数は19万件です。つまり、この差の16万件は、独占権のない新規技術の公開情報と考えられます(厳密には、たいしたことない技術もあるのかもしれませんが)。
とすると、かなりの新規技術が独占権が付与されずに、無料公開されており、特許制度自体は、社会の貢献になっている?と考えて良いのかなと思われます。

これとは逆に、一度、公開されてしまった技術は、特許を取ることができません。
いわゆる、新規性がない・・ということになり、その人が発明していないと考えられるからです。

ですので、特許をとりたい技術を、インターネットで公開してしまえば、理論的には、他社が権利を取ることができないのです。
そのため、他社に特許をとらせないため、特許出願をしますが、自らも特許権をとらない・・という会社があります。

どういう事かといいますと、特許の出願をして、その後、その技術が特許庁により公開されます。これで、この特許出願は、目的を達したとして、自らが特許権を取得するための余計なコスト(その特許の審査請求料や、特許取得のための料金)を払わない・・という会社があります。

たしかに、この方法で、他社の権利化を阻止することができますが、当然ながら、自ら権利を取得することはできません。

それなら、そもそも、特許出願しなくても、よかったのでは?と思いますよね?これは、インターネットがない昔、世の中へ技術を公開するために、雑誌に載せるなどの手間を考えれば、特許の出願をしてしまうほうが、簡単だったという慣習によるものでした。

しかし、今は、インターネットの世の中ですから・・。
公開のみを目的とした場合は、例えば、以下のようなサイトが利用出来るでしょう。

特許の公開サイト IP.COM 発明協会
意匠の公開サイト DESIGNPROTECT

本当に自社が特許権を取りたい技術のみを特許出願する。
そして、他社の権利化を阻むために、技術を公開するのみの目的であれば、上記のようなサイトを利用する。

これが、今後の適切な知財マネジメントなのではと考えます。

2011年1月1日土曜日

自己革新とは

011年になりました。
明けまして、おめでとうございます。

今年のソシデアは、ホップ・ステップ、ジャンプの、「ステップ」の段階に移れればと思っています。今年もよろしくお願いします。

今日は何だか、元気で朝早く起きてしまいました。

「イノベーションについて考える人、その人自身が自己革新的な考え方が出来ていなければ、会社に対してイノベーションを主導できるわけがない」

昨年、最も印象に残った言葉で、東大の妹尾先生が、このようなニュアンスをおっしゃていました。

その人自身が自己革新的な考え方が出来ている、とは、どういうことなのでしょうか?

自己革新とは、私たちの馴染みがあるところでは、アーティストが実現していたことなのではないかと思っています。彼らは、自己革新の表現者であることが存在意義であるとも言えます。

例えば、ベートーベンは、交響曲3番、5番、9番と、飛躍的に革新的な曲を作曲されました。これは、過去の先輩たち(モーツァルトさんやバッハさん)の偉業を継承しながら、自分自身の中で音楽と向い合って、音楽で表現できるもっと深いもの、を探し続けて、もがいて出した結果が、誰も聴いたことがない革新的な音楽を生み出したように思います。

したがって、イノベーションとは、過去のその分野における偉業を継承し、認識しながら、自分自身がさらに、その分野において、その分野の可能性の限界まで見つめて、もがいて出した結果である、とも言えるのではないでしょうか。

これをあてはめると、自分の場合には、従来の知的財産業務を承継し、認識しながら、自分自身がさらに、企業経営において、その可能性の限界まで見つめて、新たな知的財産マネジメントの方法を見つけること、が、ソシデアの責務であり、ソシデアに当てはめた自己革新的な考え方なのでは・・と思っています。

すぐに、自己革新的な考え方で、サービス提供ができるのは難しいかもしれません。しかし、少なくとも、そのような心構えで、知財マネジメントの可能性について、取り組んでいきたいと思います。