2016年8月14日日曜日

地元農産物を使用した食品・飲料は特許を取るのが適切でない場合も!?

「この場合は、かえって特許を出願しない方がよいかもしれません。」

地元産の農産物を利用したドレッシング、健康飲料、漬け物などは、その特徴的な製法などで食品の特許を取得できます。そして、特許を取得すれば、20年間、その製法で作った商品は独占販売できるわけです。さらに、その商品は特許製品であるというお墨付きがもらえるために、営業効果も得られます。しかし、このような食品・飲料は、特許を申請しない方が良い場合もあります。なぜだか、わかりますか?

「これ、変わった味がするね。美味しい。自分でも作ってみようかな。でも、どうやって作れば良いかわからない。」

私は、料理は下手ですが、気分転換にパスタを作るのが好きでして、休日のお昼に、ナポリタンのスパゲッティーをよく作ります。それでも、学生の頃から行きつけの喫茶店で、ナポリタンをたべてしまいます。すみません、ナポリタンが好きというのもありますが、その喫茶店のナポリタンは、自分にはない美味しさがあるな・・と思い、その店につい足を運んでしまうわけです。ナポリタンは、ケチャップ、バター、ウィンナー、たまねぎ、ピーマン等の原材料からできるわけですが、店長自慢の隠し味、例えば、ワインやスパイスの細かい種類まではわからないものです。

これと同じように、県内の植物を利用した健康飲料を消費者に提供する場合、裏に貼ってある製造元情報のラベルや、飲料の見た目や味などで、何が原料として使われているかの特定や推測は、ある程度できますが、その原料の配合割合や、配合する際のちょっとした温度調整などまではわかりません

なので、商品を市場で販売しただけでは、この作り方が公開されず、ノウハウとして隠すことができます(専門家が調査すれば判明する可能性がありますが、一般人にはわからないという意味で)。

しかし、このノウハウを特許で申請してしまうと、特許権の成立不成立にかかわらず、16ヶ月後には、この作り方のノウハウが、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で公開され、インターネット上で検索可能に公開されてしまうのです。したがって、模倣者が、インターネット検索で、この作り方を知って、日本の特許権が及ばない、中国や台湾などで、商売を始めてしまう可能性があります。この行為は違法と言いがたいため、現実にも、このような情報流出が起こっており、日本の特許文献が他の国の言語に翻訳され、海外に漏洩していることが問題になっています。

このような、特許申請による技術情報の流出があるにも関わらず、機械や電気、IT等の発明は、特許を申請する企業がほとんどです。

なぜだかわかりますか?

これは、その機械製品や電化製品を購入して分解すれば、その技術情報が、詳細までわかってしまうからです(リバースエンジニアリングと言います)。

特許制度は、もともと、レオナルド・ダ・ビンチが、自身が苦労して発明した「水揚げポンプ」の製造販売を、他人に模倣されることを避けるために、王様に20年の独占権を依頼したことがきっかけと言われています。ポンプもその製品を解体すれば、仕組みはすぐにわかって、模倣されてしまいますから、守るのは人間の法律で守る、特許精度しかありません。

このように特許は、製品を購入して分解すれば、技術情報が細部まで他人に伝わってしまう場合に、出願申請することの効果が大きいといえるでしょう。このような知的財産戦略をオープン&クローズ戦略と呼んでいます。

なにか新商品を開発したり、発明をした場合に、闇雲に特許を申請すれば良いものでもありません。その一方で、特許を申請したほうが、他人の模倣を排除できる効果が大きい分野もあります。したがって、自身の新商品が、どのように他人に模倣される可能性があるかを意識して、特許等の知的財産権の利用をご検討ください。

(宮崎太陽銀行 掲載コラムより)