2015年3月23日月曜日

宮崎で一番需要がある知的財産権は?

日南家具工芸社にて飫肥杉のものづくりを見学させていただきました。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」。有名な福沢諭吉の「学問のすすめ」のくだりである。天が人を生み出した時、人は同じ権利を持つ。しかし、なぜ現実の世の中では、人によって、社会的な地位や資本力の差などの違いが生じるのか?諭吉は、それを「人は学ぶか学ばないかによって人としての差ができる。人は学ばなければ知はない。知のないものは愚かになる」と説いている。

知は、本来的には、何か目的を達成するために、人間が活用できる道具ともいえよう。ここで、我々の社会は、資本主義社会であるから、経済的な効果を得ることを目的として“知”を活用する。したがって、今の社会では、経済的な効果を発揮できる “知”こそ、知的財産と読んでおり、知的財産とは、特許発明となる技術、意匠的なデザイン、ブランドとなる商標、書籍や文学などの著作物、営業上の秘密等の商業的な成功に結びつく可能性があるものを、知的財産と呼んでいるといえよう。

さて、宮崎県や鹿児島県で一番需要がある知的財産の種類は何か?この質問は答えが難しいと思うので、弊事務所の場合でお答えすると、案件で最も多い知的財産の種類は、「商標」である。商標とは、商品やサービスに使う文字やマークである。例えば、自動車メーカの本田技研工業は、商品「自動車」に「HONDA」というネーミングの商標と、車のエンブレムのマークの商標を所有して他社の模倣を防止している。

ところで、皆さんは、「日向夏」が、お菓子の商標として日本で既に登録されていることをご存知であろうか?日向夏は、実は、ある会社がお菓子で取得した登録商標である。したがって、「日向夏」という言葉は、商標権者以外はお菓子では使えないはずである。しかし、県内のスーパーやお土産屋さんでは、「日向夏」と表示されたアメや和菓子等を、様々なメーカが販売しているのを見かけるであろう。実は「日向夏」という言葉は、既に柑橘類の一定の種類を表す果物として、普通名称となっているのである。この場合は、商標権の権利は行使することが出来ず、他の業者が自由に使えることができるのである。

商標で最も多いトラブルは、起業時や新商品開発時のネーミングの問題である。皆さんが新しいネーミングを付けた場合に、それが既に誰かの登録商標であるという問題だ。ネーミングを考えた場合は、その名前が、他人によって商標を登録されているか否かを確認していただきたい。先日も、オープンしたての宮崎県内の飲食店が、東京の商標権者の飲食店と全く同じ名前の店名を付けて、警告されて、店の看板、チラシ等を全て作り直しとなり、起業時に数十万円近くの損害となった。

特許庁電子図書館では、初心者用の商標検索があり、インターネット検索のように、すぐに簡単な商標調査を行うことが可能である。ちょっとした確認で、損害賠償を避けられるのであるから、是非とも実施していただきたい。ただし、自分の名前と、他人の登録商標が全く同一ではなく、微妙に異なる場合は、専門家でないと判断が難しい。その場合は、お気軽に弊所にご連絡を!

宮崎太陽銀行 「知財の散歩道 」第2回 コラム