2016年12月31日土曜日

フラッシュが光を与えるのは写真?それとも貧しい人? 発明が変える人々の意識

    米国でベストセラーの本を紹介します。『世界をつくった6つの革命の物語』(著・スティーブン・ジョンソン、朝日新聞出版)には、人類史の中で、発明が世の中の意識を変えた例が紹介されています。
 博学者スミスが1861年、ピラミッドの内部の真っ暗な「王の間」を撮影しようとしたとき、ガス灯、ろうそく、たいまつで暗い「王の間」を撮影しようと試みましたが、どうしても撮影ができません。そこで、マグネシウムを火薬と混ぜて閃光を起こすと撮影ができたのです。それが、今のカメラのフラッシュにつながりました。さて、このフラッシュの発明で、世の中はどう変わったでしょうか?それまで、暗く撮影できなかった荒廃したスラム街が、フラッシュにより鮮明な写真として新聞に掲載され、人々が貧困なスラム街の生活を知ることとなりました。これにより、世論が動き、州の法律が制定され、スラム街の衛生改善が行われたのです。つまり、フラッシュの発明は、高価なカメラを使用する人とは全く関係がないスラム街の住民に、文字通り、「光を与えた」ということです。

 それでは、欧州の個人主義やルネッサンスに影響を与えた発明はなんでしょうか?それまで、人は、水たまりか金属の反射でしか自分の顔や身体を見ることができず、自分自身を明確に認識できませんでした。それが、「鏡」を発明することにより、人は自分自身を視覚にしっかり捕らえることができるようになり、「個」の認識が生まれたのではと言われています。個人である自分自身を見つめ直すきっかけを、鏡という発明が与えたとも言えます。

 ところで、私は仕事柄、「本当にすごい発明って、なんでしょうね?」と議論することがあります。私は、「人々の意識を変える」ような発明ではないかと思います。今の時代で、人々の意識を変える発明って何でしょうか?イノベーションと言う言葉に既に飽きさえも感じる現在、そんな発明はあるのでしょうか?例えば、人工知能、IoT (Internet of things)は、その可能性があると企業では捉えられているようで、これらの分野は、今年、多数の特許出願がされています。確かに、人類全体でとらえると、世界的なトレンドは、そうかもしれません。ただ、そこまで大きな発明をするのはちょっと難しそうなので、まずは、身近な人々の意識にフラッシュのように「光を与える」アイデア、発明から考えましょうか?あなたの身近な人への発明が、思いもよらぬ人への意識を変えるきっかけになるかもしれません。知的財産が世の中を変えるとは、まずは、人々の頭の中を変えることなのかもしれませんね。

2016年10月5日水曜日

新商品開発に必須な要素は、仲間作り


 地域の産業を成長させるために必要な要素はなにか?

「地域を愛して社員とともに育ち、地域の資源を活かし、地域のニーズをふまえて絶えずイノベーションを起こしていく起業家魂こそが、地域再生の大きな担い手であると痛感している」 

 宮崎大学の根岸准教授が「中小企業と地域づくり」(鉱脈社)にて述べている。

 地域の産業を成長させるために必要な要素は、資本主義社会が続く限り、地域発のイノベーションであろう。
 イノベーションに必要な要素は、新しい知(まだ認知されてない知)と、それを活用する戦略であるが、そのような技術的なことの前提として必要なものがある。
 それが、諦めない強い想いであろう。根岸先生もご指摘の起業家魂である。この諦めない強い想いこそが、ガソリンとなって前進し、新しい知を産みだし、戦略を構築すると言えよう。

 しかしながら、諦めない強い想いは、経営者と言っても維持することが困難だ。例えば、30代の社長がこれから30年間、常に諦めない想いを維持し続けることは困難であろう。

しかしこれを維持する方法がある。信頼できる仲間たちと想いを共有し、想いを育むことによって、その諦めない想いは、維持するというレベルではなく、さらに成長し、もっと大きな想いとなっていく。孤独な戦いでは、三蔵法師でも天竺に行くのは困難であろう。信頼できる仲間とイノベーションへの道程を共に歩み続けることで、諦めない強い想いが維持できる。

 ところで、私は、職業柄、弁理士という仕事をしているため、発明やアイデアに対して特許を取得し、知的財産という形で発明者が権利を取得する手伝いをしている。しかしながら、一方で、一人のアイデアで作られた発明品では、特許が仮に登録されても、売れない商品が多いことに気が付かされる。その発明の”知”が、その人のもののみであるので、発明品、デザイン、ネーミング等に他人の視点からの“知”が十分に反映されていない場合が多いからである。

 現在、イノベーションと呼ばれる商品は、”知”がミックスされた商品であり、アップルのiPhoneは、約1万の知的財産権が含まれていると指摘する学者もいる。

 すなわち、本当に売れる商品を開発するならば、多くの信頼できる仲間の意見を取り入れる必要がある。それは、単に発明のアイデアのみではなく、デザインやネーミング、生産方法、流通方法、販売方法など、商品が産まれて消費者の手に渡るまでの多くの”知”がミックスされることが、ヒット商品には要請されているのだ。したがって、この意味でも、信頼できる仲間との商品開発が重要ではないかということを提案したい。

 一方で、新商品開発段階で、アイデアやデザインを他人に模倣された、盗用された方が弊所に相談に来るケースも枚挙にいとまがない。すなわち、信頼する仲間と思っていたら、裏切られたケースである。ここで理解できるのは、新商品を開発するとは、商品を創り出すとともに、自分が信頼できる人材を創りだすということであろう。これはまさしく、発明者及びその起業家自身の人格的な成長こそが、新商品開発に必要ということも言えよう。 (宮崎日日新聞 マーケと知財 コラム24回)

2016年8月14日日曜日

地元農産物を使用した食品・飲料は特許を取るのが適切でない場合も!?

「この場合は、かえって特許を出願しない方がよいかもしれません。」

地元産の農産物を利用したドレッシング、健康飲料、漬け物などは、その特徴的な製法などで食品の特許を取得できます。そして、特許を取得すれば、20年間、その製法で作った商品は独占販売できるわけです。さらに、その商品は特許製品であるというお墨付きがもらえるために、営業効果も得られます。しかし、このような食品・飲料は、特許を申請しない方が良い場合もあります。なぜだか、わかりますか?

「これ、変わった味がするね。美味しい。自分でも作ってみようかな。でも、どうやって作れば良いかわからない。」

私は、料理は下手ですが、気分転換にパスタを作るのが好きでして、休日のお昼に、ナポリタンのスパゲッティーをよく作ります。それでも、学生の頃から行きつけの喫茶店で、ナポリタンをたべてしまいます。すみません、ナポリタンが好きというのもありますが、その喫茶店のナポリタンは、自分にはない美味しさがあるな・・と思い、その店につい足を運んでしまうわけです。ナポリタンは、ケチャップ、バター、ウィンナー、たまねぎ、ピーマン等の原材料からできるわけですが、店長自慢の隠し味、例えば、ワインやスパイスの細かい種類まではわからないものです。

これと同じように、県内の植物を利用した健康飲料を消費者に提供する場合、裏に貼ってある製造元情報のラベルや、飲料の見た目や味などで、何が原料として使われているかの特定や推測は、ある程度できますが、その原料の配合割合や、配合する際のちょっとした温度調整などまではわかりません

なので、商品を市場で販売しただけでは、この作り方が公開されず、ノウハウとして隠すことができます(専門家が調査すれば判明する可能性がありますが、一般人にはわからないという意味で)。

しかし、このノウハウを特許で申請してしまうと、特許権の成立不成立にかかわらず、16ヶ月後には、この作り方のノウハウが、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で公開され、インターネット上で検索可能に公開されてしまうのです。したがって、模倣者が、インターネット検索で、この作り方を知って、日本の特許権が及ばない、中国や台湾などで、商売を始めてしまう可能性があります。この行為は違法と言いがたいため、現実にも、このような情報流出が起こっており、日本の特許文献が他の国の言語に翻訳され、海外に漏洩していることが問題になっています。

このような、特許申請による技術情報の流出があるにも関わらず、機械や電気、IT等の発明は、特許を申請する企業がほとんどです。

なぜだかわかりますか?

これは、その機械製品や電化製品を購入して分解すれば、その技術情報が、詳細までわかってしまうからです(リバースエンジニアリングと言います)。

特許制度は、もともと、レオナルド・ダ・ビンチが、自身が苦労して発明した「水揚げポンプ」の製造販売を、他人に模倣されることを避けるために、王様に20年の独占権を依頼したことがきっかけと言われています。ポンプもその製品を解体すれば、仕組みはすぐにわかって、模倣されてしまいますから、守るのは人間の法律で守る、特許精度しかありません。

このように特許は、製品を購入して分解すれば、技術情報が細部まで他人に伝わってしまう場合に、出願申請することの効果が大きいといえるでしょう。このような知的財産戦略をオープン&クローズ戦略と呼んでいます。

なにか新商品を開発したり、発明をした場合に、闇雲に特許を申請すれば良いものでもありません。その一方で、特許を申請したほうが、他人の模倣を排除できる効果が大きい分野もあります。したがって、自身の新商品が、どのように他人に模倣される可能性があるかを意識して、特許等の知的財産権の利用をご検討ください。

(宮崎太陽銀行 掲載コラムより)

2016年6月24日金曜日

商売の要を守る知的財産 (消費者は2度評価する!)

左が虎屋の上田社長で、真中が浜元社長
「消費者は商品を2度評価します。買う前の評価と、買った後の評価。この評価をいかに上げるかが勝負。」

先日、延岡の老舗菓子屋「虎屋」の上田社長と会食をしていたところ、社長から出た言葉です。これは、社長のオリジナルの考え方ではなく、「カビキラー」「トニックシャンプー」といったロングセラー商品を理論的に開発している梅澤伸嘉先生のCP理論という考え方です。私も以前からこの考え方は商品開発に有益と感じており、社長と意気投合しました。

「お、この商品を買ってみたい」と顧客に思わせる魅力的な商品を開発することを、コンセプト(CPC)開発と呼びます。そして、買った後に、「この商品、買って良かった」と顧客に思わせる商品は、パフォーマンス(CPP)が強い商品といいます。つまり、いかに、良いコンセプトを開発して、人に興味を持ってもらい、購入いただいて、いい商品だ!と実感させて、購入のリピートや口コミを促す、これが良い商品開発か否かの決め手になるという考え方です。

虎屋さんは、高千穂神話を由来とする「破れ饅頭」や、秋の延岡、鮎やなの落ち鮎をモチーフとした「鮎やな餅」など、延岡や宮崎の文化を商品コンセプトとして、菓子の商品開発をされています。延岡や宮崎の文化に興味があって、かつ、菓子を求める顧客が、この虎屋さんの思いを表現したネーミングや、パッケージデザインを見て、最初の購入をします。そして、実際に、菓子を食べてみると、優しく、美味しい味わいであった(良いパフォーマンス)ことを感じて、再度、リピート購入をしたり、知人に口コミするという循環を生み出しているといえるでしょう。

そして、このコンセプトとパフォーマンスを知的財産権で守ると、強固な商売ができるのです。よく、弊所の事務所に来られて、こういった発明や商品を開発したが、どこで知的財産権を取得すればよいか、わからない、という相談を受けます。しかし、これは、守りのみを意識して、攻めを充分に意識できていないように思います。

つまり、その商品を消費者が買う決め手はなんでしょうか?コンセプト開発された、魅力的なネーミングなのか、パッケージのデザインなのか、それとも、商品のパフォーマンスを担保する新しい技術なのか?「ここだけは、絶対、他人に真似されたくない」と強く思われる、その特徴こそが、知的財産権を取得すべきところです。人に真似されたくないネーミングであれば、商標権が取れますし、パッケージデザインであれば、意匠権が取れます。誰も思いつかない新しい技術であれば、特許権や実用新案権が取れます。これらは権利を取得すれば、日本全国で貴社しか使えなくなります(意匠権や特許権であれば20年間、商標権であれば更新すれば永遠に)から、上記のコンセプトやパフォーマンスは、日本全国であなただけのものとして、独占できるのです。

逆に、このようなCP理論を意識したビジネスを行なっていても、他人に商標権や特許権等の知的財産権を取得されてしまうと、そのビジネスを差し止められたり、売上の一部を権利者に支払う必要が出てきてしまいます。特に、弊所には、地方の中小企業が、都会の知的財産権の権利者から警告状を受けて、商品のネーミングの変更をさせられたり、商品の販売中止となるトラブルの相談があります。商品開発とともに、これだけは真似されたくないと感じられる特徴については、いま一度、知的財産権の取得について、検討してみることをお薦めします。


写真の浜元社長は、自転車の発明家で、日本・中国・台湾で登録された特許を株式会社IPブリッジ社に譲渡して大手企業へのライセンスを我々と試みています。浜元社長が先日テレビ出演したところ、偶然、上田社長と小学校の同級生というがわかり、48年ぶりの再会をいたしました。

2016年3月27日日曜日

宮崎県は、特許出願している中小企業の割合が、九州で2番目に高い県になりました!

中小企業の知財出願状況(平成27年)特許庁資料より抜粋
宮崎県について、ちょっと驚きの結果が、最近、特許と意匠に関して見られました。

ブログの題目の内容では、わかりにくいと思いますので説明しますと・・

特許庁が毎年、47都道府県ごとに、中小企業数の特許出願数という統計を出します(中小企業の知財出願状況)。この結果は、各県の特許出願数ですから、その県に中小企業の数が多ければ、当然、特許出願数も多くなります。ですから、中小企業数が少ない宮崎県は、顕著な数が出ることは難しくなってしまいます。

そこで、特許を出願している中小企業数を、その県の中小企業数で割った割合の統計を、特許庁が出しています(上記リンクの27頁)。こちらで、なんと、宮崎県が熊本県、鹿児島県等(大分県をわずかに抜いた)をおさえて、九州で2番目の数字を達成しています。

上記を拡大しますね (赤2013年 ピンク2014年 紫が2,015年)
特許を出願している中小企業数を、その県の中小企業数で割った割合


これは、宮崎県が知財が浸透している割合が、他県に比べて高いことを示すといえるのではないでしょうか。残念ながら、全国平均から見ると、九州は、他の地域に比べて、全体的に特許を出願している企業数の割合が低いです。しかし、宮崎は、2013年から2015年にかけて、順調に出願数を伸ばしているといえるでしょう。

これは、ひとえに、宮崎県内で知財に従事している県の知財総合支援窓口(宮崎県発明協会)さんや、宮崎県の弁理士、弁護士が、日頃の地道な努力で、宮崎県内の知財リテラシを少しづつ向上させている結果ともいえるのではないでしょうか。

また、意匠出願は、もっと圧倒的でして、意匠出願している中小企業数を、その県の中小企業数で割った割案の統計も、九州で2番目となっています(51頁)。この数字の伸びは、他県と大きく異なるように思います。

意匠出願をしている中小企業数の割合い(赤2,013年 ピンク2014年 紫が2,015年)

ひょっとしたら宮崎県は、地方で特許や意匠の出願数を増加させたモデル県になり得るかもしれません。

とはいえ、全国平均には、まだまだ及ばない数字です。県内の知財関係者の皆様と、一緒に、さらなる知財の普及を目指して、頑張っていこうと思います。

2016年1月25日月曜日

弁理士の役割りは、売れる商品づくり、もなの??

サーファー仲間で話題になっている「ガチャロック」
消費者ニーズにマッチした宮崎発の発明品です。
「これは、売れる商品ではないから特許をとっても無駄になるかもしれません。」

こんなセリフを弁理士に言われたら、あなたはどのように思いますか?

自分は、その発明が、消費者としても自分が判断できるものである時、このセリフを言うべきなのか、言うべきではないのか、非常に悩むときがあります。

弁理士という仕事は、発明や商品が、知的財産権を取得可能であれば、知的財産権が取得可能かを確認して、特許庁に申請し、クライアントのための知的財産権を獲得する仕事です。

例えば、特許であれば、それが、世界中になかった新しいものであって、産業をある程度進歩させるものであり、現実的に今の科学で実現可能な発明や商品であれば、特許を取得できますので、申請します。

しかし、特許を取得可能であることと、それが売れる商品となるということは、必ずしも一致しません(というか、ほとんど一致しない)。なぜなら、例えば、特許の条件となる新規でなくてはならないという条件は、誰も思いつかない奇抜なアイデアでも、クリアできますから、逆に言うと、ニーズが全く無く、誰も思いつかないものでも、特許が取得できるのです。むしろ、誰も思いつかないぐらいに利用されない発明こそ、新規性が高いですから、特許になるとも言い得ます。こういった発明が、休眠特許になっている現状もあるかと思います。

我々、弁理士は、商品を持参されるクライアントの特許性を判断することが、第一義的なサービスです。しかし、地方の弁理士になると、商品に関してアドバイスができる専門家が少ないために、弁理士にも、「これって、売れると思いますか?」と尋ねてくるクライアントも多いです。

単に、特許が取れる、取れないという議論であれば、弁理士は、その専門家であるので、特許庁の判断基準に基づいて、判断ができるのですが、売れますか?売れませんか?という疑問に対する回答は、マーケティングの専門家ではないので、困難です。まして、今売れないと思われるものが、将来も売れないとは限りませんし・・。

しかし、弁理士がこのマーケティングの知識を得たり、また、マーケティングの専門家から意見を得れば、その商品が売れるか売れないかは、ある程度、検討がつく場合もあります。

特許はおおよそ、取得まで50万円かかります。これほどの投資をして、売れない商品だったら、この目の前のクライアントはどうするのか・・。そういったクライアントに対する心配は、地方の弁理士として、感じざるを得ません。

自分の判断は、もしその発明を一人の消費者として判断できるのであれば、一人の消費者として率直に意見はいうべき、というのが答えです。

仮に、新規であって、特許性が高くても、「奇人変人コンセプト」と言っては失礼かもしれませんが、発明者の思い入れが強すぎて、ニーズが明らかに弱すぎるのではないかと感じられた発明に関しては、それは、ニーズが有るか他人(業界の人や消費者)の意見を確認してから、特許を出されたほうが良いのでは、と指摘させていただいています。

やはり、世の中に役立つ商品やサービスのアイデアこそ、知的財産として高い価値を持つものです。いまだ満たされていないニーズに対する商品やサービスに適切な知的財産権を取得する。そんな弁理士サービスが理想的ではないかと感じています。

(写真は、サーファーの梅山さん自らがニーズを見つけて仲間たちとともに発明した製品。今後、爆発的なヒットの予感!?)

2015年11月22日日曜日

発明家が経営者へ旅立つとき。

今年のコンテスト授賞式の後の写真
(知っている人が多く驚きました!)
※宮崎商工会議所様より掲載許諾いただきました

弊所が応援している2名の発明家が、宮崎商工会議所主催のビジネスコンテストにて、なんと、2位、3位に入賞しました!

3位は、「ガチャロック」というサーフィンのフィンを簡単に取り付け可能な器具を発明した、梅ちゃんこと、梅山さん。経営者としても頼もしい女性発明家です。発明の詳細は下記まで。

https://m.facebook.com/i-deamake-%EF%BD%B1%EF%BD%B2%EF%BE%83%EF%BE%9E%EF%BD%B1%EF%BE%92%EF%BD%B2%EF%BD%B8-831341406941765/

2位は、弊所が昨年から応援している、楽にこげる自転車ギアの浜元さん!その後、宮崎県内の複数の会社と提携し、海外販売まで視野に入ってきました。芸術的な発明家である浜元さんの表情が、だんだん経営者の表情に変わってきていることを日々感じていたなかで、ビジネスプランコンテストでの受賞。発明が商品になっていくことを感じています。商品の詳細は下記まで(音楽が鳴りますので注意)。

http://hamamotoyouichirou-bicycle.com/

会社の成長は、社長(発明家)の成長だと思います。発明が単なるアイデアだけで終わらず、それで事業を行うために、経営者へと旅立つ姿は、発明にかける”覚悟”が決まっていて、素晴らしい決意だと思います。

地方の発明家は本来、地方に新しい製造業を生み出す力があるのですが、なかなか、発明が事業になれません。単なるアイデアで終わってしまうからです。しかし、この2人は堂々と、発明家から経営者に旅立っているので、尊敬するとともに、非常に嬉しく思いました。

コンテスト受賞は、通過点ではあると思いますが、お二人のさらなる飛躍を期待したいと思います。受賞おめでとうございます。

2015年10月3日土曜日

宮崎の発明がシンガポールで展示されました!

写真の一番右のパネルになります。

9月22日,23日にシンガポールで開催されたTechInnovation2015に、宮崎の個人発明家の自転車の発明が展示されました。

海外でもこの発明を知ってもらいたい・・と思っていながら、なかなか、実現できなかったのが現状でした。今回、この発明の協力をいただいているIPBridge社のブースをお借りして、パネル展示させていただきました。

こちら、自転車のギアを2重構造にして、弾性体を利用した発明なのですが、発明の性格上!?、イメージしやすい発明なのか、目をとめて、興味を持っていただいた方が多かったということ。

今回の展示で、この発明が、グローバルでも、一般の方に興味を持たれる発明であることが、実感として確認できました。

この発明の出口は、この程度で終わりではありません。さらに、大きな挑戦を発明者さんと進めていきたいと思っています。

2015年9月22日火曜日

知財を重視するベンチャー企業


佐賀大発ベンチャーの株式会社オプティム。
ここの菅谷社長の本がダイヤモンドから出ました。僕もこの方と出会わなければ、独立しようと思わなかったぐらい影響を受けました。若者の熱い仕事の作り方や、情熱の出し方が泥臭く伝わってきます。ある意味、九州気質?特許の話もたくさん出てきますので、手にとってみてください。
「おわりに」で、会社をお金で見ている中国人投資家への社長の返答は、ちょっと格好いいです。続きは書店で!僕も最後にちょこっと出てます

2015年6月9日火曜日

「色だけの商標」の意味って!?





この色を見て、どこかの商品を思い出しますか?

そうです。こちらは、Tiffany BLUEという色で、貴金属を販売するティファニーが1837年から使用している色です。

その色を見ると、すぐに、その商品やサービスを思い出す・・ということは、色彩がどこのメーカの商品であるかを識別してくれるわけです。

このような色彩を、商標的な効果がある色彩、と言います。

仮に、この色を包装紙等で使用する宝石を販売した場合に、Tiffanyと書いていなければ、ティファニー社の商売に対する侵害にはならない!?・・というのでは、不合理ではないですか?

そこで、色彩のみについて、商標を取得できるという制度が、日本にも導入されました。

つまり、この色のみで権利が取れるので、この色を使って、同じような商売を行うことは、商標権の侵害になることがありえるわけです。

4月からこの「色彩のみからなる商標」の制度が始まり、既に200件以上(2015年5月31日現在)の申請があったようです。

この申請の中に、下記の商標が申請されています。(商願2015-29957より抜粋)




これは、何のサービスかわかりますか?「餃子の王将」のマークですね。この場合、色以外に、「く」の字の模様も含まれています。つまり、図形と色彩の混合の商標になるわけです。

そうすると、色を真似て、図形のみ変えたマークを使用する餃子屋さんは、どうなるのでしょうか?

その場合、商標が類似かどうかを判断するときに、「色彩」が最も重視されて、図形は、参考的な判断となります。つまり、図形の相違は、比重が高くない(考慮されないといっても良い)のです。そういった意味で、特許庁はこの商標を「色彩のみからなる商標」と呼んでいます(配色された色の相対的な面積は規定されます)。

色彩の商標制度が出来る前でも、実は、上記のような餃子の王将のマークは、文字なしのロゴとして、登録が可能でした。

しかし、ロゴの図形が異なって、色彩のみが同じ場合に、模倣者を侵害と出来にくかったのです。そこで、今回の色彩商標制度により、このような模倣の防止をすることができるようになりました。

色を、商品や企業イメージで利用されている企業は、検討してみてもよいのではと思います。

2015年5月6日水曜日

特許開放とはどういう意味なのか  -トヨタのオープン特許戦略-

 昨年末に発表されたトヨタの燃料電池車「ミライ」。水素充填3分で650kmの走行が可能なエコカーである。先日、この燃料電池車(FCV)に関する特許約5,700件をトヨタが無料で開放するという報道がされた。特許はおおよそ1件あたり成立まで、50万円近いコストがかかる。仮にその額であるとすると、5700件  50万円=285000万円を他社にサービスするというわけだ。なぜであろうか?

 知財業界では、現在、オープン&クローズ戦略というのが一つのキーワードになっている。オープン&クローズ戦略は、東大の小川紘一先生の理論であり、これは、自社の技術を他社に使わせるオープンな領域と、他社に使わせないクローズの領域を明確に分けて、新商品や新サービスを業界に仕掛けていく戦略である。米国のテスラモーターズでも、昨年6月に、トヨタと同様、電気自動車に関する特許を開放している。トヨタもテスラも単純に、技術をオープンにしているだけにみえるが、彼らがクローズにしている領域はなにか?企業であるのだから、当然、慈善事業ではなく、売上げに結びつける必要がある。

 実は、この特許の開放は期限付きなのである。特許の開放は、2020年末までに限っているのだ。したがって、2021年からは、参入した他社や協力会社は、トヨタに特許料を支払う可能性が出てくるのである。このケースでは、トヨタは、他社や協力会社の参入を促進しなければ、水素ステーションが全国に配置されないし、水素以外の技術での車の開発が進んでしまう可能性がある。そこで、2020年までの5年間だけ、特許を無償開放したというわけである。2020年からは利益を得られるクローズ戦略なのだ。

 この事例を参考に、貴社でも、自社の情報の、何を、いつまで、オープンにして、何を、いつまで、クローズにすれば、事業が成功するか考えてみてはいかがだろうか。オープン&クローズ戦略は、決して技術的に高いレベルにないと出来ない議論ではない。身近な例を上げてみよう。

 先日、宮崎県の都農町で、「都農トマト鍋」というレトルトのトマトスープを販売している団体(都農もりあげ隊)の代表の矢野さんとお会いした。この方は、「トマト鍋という言葉は、都農町全体で、はやらせたい」とのこと。そこで、商標としては、「都農トマト鍋」(文字のみであれば地域団体商標)では申請せずに、団体の名前である「都農もりあげ隊」で申請をした。些細なことかもしれないが、この例では、「都農トマト鍋」を都農地方のトマト農家全体で盛り上げる・・といったオープン戦略(イノベーションの誘発)と、その商品の出所を表す「都農もりあげ隊」は、商標で守りたいといったクローズ戦略を意識している。例えば、「都農トマト鍋」の商標を取ってしまったら、都農地域の「トマト鍋」の他社の参入を許さないので、「トマト鍋」自体が、この地域全体で流行らなくなってしまう可能性がある。しかし、「都農トマト鍋」という言葉をオープンにすることで、地域全体での宣伝効果が高まるし、行政に協力してもらいやすくなる。

 オープン&クローズ戦略という現在流行の知財戦略は、ちょっとした事から始められるのである。貴社もトヨタや「都農トマト鍋」に負けずに、この戦略を意識してみてはいかがであろうか。




(*)「都農トマト鍋」の文字そのものは、地名+普通名称の組み合わせで商標の登録は困難とも言えるが、文字をロゴなどと組み合わせて権利化する場合は商標の登録が可能となる。ロゴも権利に含まれるが、一般には、文字で権利が取られたと誤解されてしまうことが多く、結果として、他社の参入が促されないことが多い。

(宮崎太陽銀行 「知財の散歩道」 第3回コラム)

2015年3月23日月曜日

宮崎で一番需要がある知的財産権は?

日南家具工芸社にて飫肥杉のものづくりを見学させていただきました。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」。有名な福沢諭吉の「学問のすすめ」のくだりである。天が人を生み出した時、人は同じ権利を持つ。しかし、なぜ現実の世の中では、人によって、社会的な地位や資本力の差などの違いが生じるのか?諭吉は、それを「人は学ぶか学ばないかによって人としての差ができる。人は学ばなければ知はない。知のないものは愚かになる」と説いている。

知は、本来的には、何か目的を達成するために、人間が活用できる道具ともいえよう。ここで、我々の社会は、資本主義社会であるから、経済的な効果を得ることを目的として“知”を活用する。したがって、今の社会では、経済的な効果を発揮できる “知”こそ、知的財産と読んでおり、知的財産とは、特許発明となる技術、意匠的なデザイン、ブランドとなる商標、書籍や文学などの著作物、営業上の秘密等の商業的な成功に結びつく可能性があるものを、知的財産と呼んでいるといえよう。

さて、宮崎県や鹿児島県で一番需要がある知的財産の種類は何か?この質問は答えが難しいと思うので、弊事務所の場合でお答えすると、案件で最も多い知的財産の種類は、「商標」である。商標とは、商品やサービスに使う文字やマークである。例えば、自動車メーカの本田技研工業は、商品「自動車」に「HONDA」というネーミングの商標と、車のエンブレムのマークの商標を所有して他社の模倣を防止している。

ところで、皆さんは、「日向夏」が、お菓子の商標として日本で既に登録されていることをご存知であろうか?日向夏は、実は、ある会社がお菓子で取得した登録商標である。したがって、「日向夏」という言葉は、商標権者以外はお菓子では使えないはずである。しかし、県内のスーパーやお土産屋さんでは、「日向夏」と表示されたアメや和菓子等を、様々なメーカが販売しているのを見かけるであろう。実は「日向夏」という言葉は、既に柑橘類の一定の種類を表す果物として、普通名称となっているのである。この場合は、商標権の権利は行使することが出来ず、他の業者が自由に使えることができるのである。

商標で最も多いトラブルは、起業時や新商品開発時のネーミングの問題である。皆さんが新しいネーミングを付けた場合に、それが既に誰かの登録商標であるという問題だ。ネーミングを考えた場合は、その名前が、他人によって商標を登録されているか否かを確認していただきたい。先日も、オープンしたての宮崎県内の飲食店が、東京の商標権者の飲食店と全く同じ名前の店名を付けて、警告されて、店の看板、チラシ等を全て作り直しとなり、起業時に数十万円近くの損害となった。

特許庁電子図書館では、初心者用の商標検索があり、インターネット検索のように、すぐに簡単な商標調査を行うことが可能である。ちょっとした確認で、損害賠償を避けられるのであるから、是非とも実施していただきたい。ただし、自分の名前と、他人の登録商標が全く同一ではなく、微妙に異なる場合は、専門家でないと判断が難しい。その場合は、お気軽に弊所にご連絡を!

宮崎太陽銀行 「知財の散歩道 」第2回 コラム

2015年2月6日金曜日

中小企業にとって知財のメリットって本当にあるの??

中小企業のものづくりにおいて、知的財産権を活用するメリットとは何だろうか。

基本的に、知的財産権は、アイデアやネーミングなどに、特許権や商標権等を取得することで、他人による、同じような製品の製造・販売を防ぎ、自社の売上を確保するためのものである。

とはいえ、決して安くない特許や実用新案、商標の申請と取得のコストをかけてまで、厳しい中小企業が知的財産権を取得するメリットは何なのだろうか。

 知的財産権というと、アップルとサムソンなどの特許侵害訴訟をイメージすることが多いと思うが、日本では、年間、特許申請数が35万件近くありながら、特許侵害訴訟が500件程度(2011年)しかない。

しかしながら、これほど多くの出願申請があるのは何故であろうか。知的財産権を実際に裁判所等での係争で活用せず、出願申請し、登録するだけでも、メリットがあると考える経営者が多いようだ。

すなわち、特許などの知的財産権が、営業を補完するために機能することで企業の売上を向上させるのというメリットを指摘したい。
 
製造業がものづくりで成功するためには、市場が求めるものを開発するニーズ開発と、そのニーズを技術的に解決するためのシーズ開発の両方が必要である。
 
 シーズ開発された製品が、世界初の技術が含まれることで、特許を取得した場合には、製品のパッケージに「特許製品」という言葉を含めることができる。これは、消費者に対し、この製品は、この技術分野の中で、世界で初めての技術が含まれるから、かつて予想できないほどの商品力があるのではないか、といった期待を与える。結果として、シーズ開発された技術に期待させ、消費者の購入意欲を向上させるであろう。
 
 加えて、大手企業から仕事の受注を得るために、他の競合企業と価格競争でのみ競り合うのではなく、特許の存在が武器になるというケースもある。例えば、受注予定の商品やサービスが画期的な特許技術で実現されることで、それが従来にない画期的な商品やサービスになることをアピールし、さらに、他社がこれを行えば、侵害行為となるか、ライセンス許諾を受ける必要があるため価格が上がってしまうことを、暗に匂わせるのである。

特許制度は、特許庁の審査官が、そのアイデアやデザインが新しいことを、先行した文献から調査し、審査を経て、登録を決める制度であるため、世の中でこの製品が新しいことが客観的に担保される。このように製品の真新しさを行政機関が担保してくれる手段は、特許制度以外には、存在しない。
 
 宮崎などの豊かな地方には、知が詰まっている農産品・工業製品が溢れている。しかし、他社や他県によって、アイデアやデザイン、ネーミングを模倣され、その果実となる大切な利益が吸い取られてないであろうか。知的財産権は、そのような模倣対策にも効果を発揮する。しかし、それだけではない。他社や他県にない、新しい技術であることを知ってもらうために利用することで、製品の消費者や流通業者に対する営業効果を高めるという効果も意識したい。

【ポイント】

★知的財産権の第一のメリットは、アイデア、デザイン、ネーミング等の模倣防止

★技術の新しさを客観的に、行政が担保してくれるものは特許制度しか存在しない

★知的財産権の第二のメリットとして、商品やサービスの営業効果を高めることも意識したい

宮崎日日新聞 2014年5月8日掲載(マーケと知財のイノベーション⑥)

2014年12月21日日曜日

マーケットインとプロダクトアウト(マーケと知財のイノベーション③)

「自分たちが良いと思う商品を売れば市場を獲得できる」

この考え方は、商品ありきで市場を考える「プロダクトアウト」の考え方と言われている。

アップルのイノベーション戦略は、このプロダクトアウト型ともいわれており、最近の経営者は、「顧客が望むものを作れば売れる」という「マーケットイン」の話は、もう時代遅れではと考える場合もあるようだ。果たしてそのような二元論で売れる商品の議論ができるのであろうか。
 
 日本には昔から優れた商品を創り出す伝統工芸が多く存在していた。例えば、伊万里焼の白磁は、1659年(万治2年)頃からヨーロッパや中東に輸出されはじめ、ドイツのマイセン(ヨーロッパ初の白磁)が登場するまで、ヨーロッパに輸出されていた。この成功が佐賀藩を潤おし、さらに、1878年パリ万国博覧会に日本の美術品(浮世絵・工芸品等)が出典されジャポニズムがヨーロッパで花開いた。
 すなわち、江戸時代から日本では伝統的によい作品・製品を創り出す技術力や概念があったのである。
そして、時代は移り、第二次世界大戦終了後、物が無い時代の日本において、当然、物質不足であるから、「モノを作れば売れる」「良いモノを作れば売れる」といった考え方が主流をなした。この考え方(プロダクトアウト)が会社において現在でも継承され、商売の基本的な考え方になっている。

しかし、時代は進み、1970年代中ごろより、市場の成熟化・飽和化や技術の高度化を迎え、いたるところで物質が供給過剰に陥り「良い商品を作ればよい」という考え方に、ほころびが見られ始めた。売上を確保したいにも拘らず、売れないという現実が企業に突き付けられるのである。企業は、このギャプを埋めるべき「顧客視点や顧客ニーズ」という考え方を導入し始めた。この考え方が「マーケットイン」である。

それでは、現在「プロダクトアウト」の考え方はいらないのかと問われれば、新商品開発には、「シーズ開発」(技術力や研究開発力はビジネスの種)として必要である。技術力や研究開発力によって、今まで市場に存在しなかった商品を開発し大ヒットした例は沢山ある。この技術力のつけた「シーズ開発」に加えて、さらに、「ニーズ開発」することによって、今まで市場に存在しなかった商品を開発し、大ヒットすることができるのである。

本来のマーケティングとは何か。それは、「シーズ開発」+「ニーズ開発」ということである。「プロダクトアウト」、「マーケットイン」という2者択一で考えるのではなく、どちらもあって始めて、成功するということである。

商売で成功したいならば、まずは、未だに満たされていない消費者ニーズである未充足ニーズの開発を始め、次に、そこから出てくる未充足の消費者ニーズ(夢・希望・期待・願望等々)を、技術的に解決するためのシーズ開発に活かすことが求められるのである。

物質で満ち足りている今日では、本当の未充足ニーズが見つかれた場合、それは、要求水準が非常に高い場合が多い。したがって、企業は、商品の技術レベルを上げるようたゆまぬ努力(シーズ開発)を行う必要があるのである。

宮崎日日新聞 平成26年4月17日 経済欄 掲載コラム 

2014年11月16日日曜日

商売の自由と知的財産


発明を創造したら特許や実用新案を取得することができる。しかし、発明は必ずしも売れる商品になるとは限らない。すなわち、発明を創造することと、市場を創造することは異なる”知”が必要であるからだ。

発明の創造性は、上述のように、特許や実用新案で保護できるが、市場の創造性は、保護されにくい。それは、商売の自由という異なる価値観が働くからである。

過度の知的財産保護は、商売の自由と繁栄の阻害になるともいわれている。例えば、ハリウッドの創始者達(ユニバーサルやパラマウント)は、エジソンの特許を回避するために西海岸まで逃れ(当時、西海岸まで特許が及ばなかったと言われている)、その映画技術に基づいた映画産業を振興させたとも言われている。

市場に対する“知”を権利として保護したいと考えて生まれたのが、ビジネスモデル特許という保護方法である。ビジネスモデル特許は、2002年あたりに一大ブームになり、住友銀行のパーフェクト特許などが話題となった。

現在は、ポスト・ビジネスモデル特許の時代になったと言えるが、ビジネスモデル特許はソフトウェア特許という形で事実上、存在している。すなわち、ビジネスモデルのうち、コンピュータやインターネットを利用して処理が行われるシステムや方法であれば、特許で保護されるのである。

ところで、日本では年間33万件近くの特許申請がされているが、皆さんは、この1割の3万件ほどのヒット商品が毎年、産まれてきていることを実感しているだろうか?

答えはNOであろう。

すなわち、発明を創造よりも、市場を創造することのほうが困難ではないか、ということが予想できよう。しかし、発明を組み合わせれば、市場を創造しやすくなることは事実のようだ。

我々が、この製品は革新的だと思うような商品、例えば、アップルのiPhoneや富士重工のレボーグなどの車は、知財ミックスと言われ、数多くの知的財産が埋め込まれている。それは、その機能を実現する発明のみならず、外観やパッケージ、又は、アイコン等のデザインや、消費者が覚えやすいネーミングなどの複数の知財がミックスされた製品なのである。逆に言うと、市場を創造するには、知財ミックスであることが前提条件となる。

多くの発明やデザインをミックスしないと、市場を創造することはできない・・とすると、自分がヒット商品を創造できるのだろうか・・と不安に感じる経営者もいるだろう。しかし、そのような受動的な考え方では、市場は創造できないのではないだろうか。

なぜなら、市場を創造するとは、既存の技術などの固定観念に捕らわれず、消費者が純粋にほしいと感じているアイデアに対し、新しい技術を産みだして実現された産物なのである。そのような産物だからこそ、結果として、新しい”知”がミックスされた製品になっており、市場が創造されるのである。

私の事務所には、九州の多くの発明家に訪れていただくが、彼らが悩んでいることは、発明品を販売し、ヒット商品にすることである。どうやったらヒット商品になるか?成功されている発明家の共通した考え方は、発明の完成を最初の一歩にすぎないと捉え、市場の創造に向けて、さらに、歩き始める人たちではないだろうか。

(宮崎太陽銀行 掲載コラムより)

2014年9月28日日曜日

未充足ニーズから商品開発 (マーケと知財のイノベーション②)

マーケティング思考でビジネスをはじめる為には、『まずは商品ありき』の思考方法から脱皮し、『消費者ニーズ』の思考方法に転換することができるかどうかが、大きな分かれ目である。

『商品ありき』の思考方法とは、商品を作れば売れるという思考方法である。戦後すぐの時代は物が足りなかったため、商品の提供そのものが消費者ニーズに合致していたといえる。一方、『消費者ニーズ』の思考方法とは、少し先の時代を先取りし、消費者ニーズを捉えて商品を提供しないと、商品は売れていかないという思考である。

しかし、前述の『商品ありき』から、『消費者ニーズ』へと本当の意味で思考方法を変化させるのが難しい。というのも、各種業界で『商品』を売るビジネスを行い、現在も会社が存続しているのに、なぜ、『商品ありき』の思考方法から、『消費者ニーズ』の思考方法へと変更しなくてはならないのかが理解できないのである。例えば、新入社員が入社し先輩から教育を受けるが、その先輩の指導の思考方法はさらに先輩の指導者から受け継いできた思考方法である。だから、その思考方法が間違っているとは新入社員には思えないのである。戦後しばらくは役に立った正しい思考方法として継承されてきたので、その思考方法が役に立たないと今更言われても、身体の隅々までいきわたっている思考方法を変えられないといった事実が存在する。

この「作れば売れる」思考方法は、もはや現在の成熟した消費社会にはマッチしない。今の社会では、『はじめに商品ありき』という思考方法から脱皮し『はじめに消費者ニーズありき』思考方法に変化が出てくれば、おのずと『売れる商品』が開発される確率が高くなるということである。

昔々、大正時代に佐賀から大阪に会社の主体を移した経営者がいた。江崎グリコの社主江崎 利一氏である。江崎利一氏の言葉に「消費者の腹の中で考えよ」という言葉がある。さすがに大ヒット商品を世に送り出した人物であるから、商品を購入してくれるのは「消費者」であることを痛いほど知っていた。だから、社長である江崎利一氏が自分で思考するのではなく、「消費者は何を欲しがっているのか」と考えたのである。出来上がった商品が、「一粒で300mキャラメル『グリコ』(一粒で2度おいしいというコピーも有名)」となった。

江崎 利一氏の言葉にあるように、「本当に売れる商品」にするためには、会社都合ではなく「消費者」側に立った商品開発が必然的に必要になる。「本当に売れる商品とは何か」の解は、「未だに満たされていない消費者のニーズ」を探し出して、消費者の目の前に提示することで得られるものである。それでは、本当のマーケティングとはとは何か?
また、次回へ・・。


2014年7月27日日曜日

ミュンヘン訪問



欧州特許庁を訪問しました。本部はミュンヘンにあり、中央駅から歩いて約10分程度。

驚いたのは、レストラン・カフェ・バーがそれぞれ併設で、メニューが豪華でした・・。
JPOと比較しては失礼かもしれませんが、欧州のトップクラスが働く環境とはこういうものかと・・
考えさせられました。若干、環境が良すぎるような気も・・・。




欧州特許庁から数分の特許事務所に、宮崎県出身の弁理士がいらっしゃいます。
横山氏を訪問しました。
伝統ある特許事務所の数少ない採用を勝ち取った彼が宮崎県出身ということで
自分まで誇らしくなりました。

2014年6月9日月曜日

ミュージックセキュリティーズさんに事務所に訪問頂きました。


ラウドファンディングというと、九州ではFAAVOが有名ですが選択肢が増えそうです。ミュージックセキュリティーズさんに事務所に訪問頂きました。最初、個人のミュージシャンを支援するということで、小口1万円づつを1000人規模で集めて、1000万円近くを支援したそうです。これはマイクロ投資というらしいですが、今や、酒造りやJリーグ、農産物販売、震災支援の事業にまでこのやり方を発展させお金の支援とブランドづくりの両方の支援をしているようです。よくまあそれだけの人からお金を集められるなあと感心しますが・・彼らの会員となっている投資家の集まりを持っていることも強みのよう。FAAVOより集められる資金も多いようですが、ブランド指導は少し厳しそう!?
資金調達会社の特徴を知って起業家は利用したいですね。

2014年6月8日日曜日

戦略の前に「想い」ありき

 イノベーションとは果たして何だろうか? 以前は「技術革新」という言葉で訳されていたが、インターネット百科事典「ウィキペデイア」には次のように書いてある。「一般には新しい技術の発明と誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革」
 日本では、年間約35万件の特許申請がされている。しかしながら、なぜ、イノベーションの数がそれほど感じられないのであろうか?
 筆者はかつてIBM、ヤフーなどの研究機関に出向き、発明相談を受け、特許申請を行ってきた。この際に、技術革新と呼ばれる新技術を実感していながら、なぜ、これらの会社が飛躍的なイノベーションを行っているように感じなかったのか疑問であった。
 技術革新=イノベーションではない。イノベーションとは、ある新しい知(まだ認知されていない知)を自発的に社会に導入させて、人々の習慣や考え方を変化させる活動であろう。これを行うのは、企業であっても、社会活動家であっても構わないが、持続的にこれを行うためには、企業の利益活動(マーケット活動)と結びつけることが一般的である。
 それでは、どうやってイノベーションを起こせるのか。イノベーションを起こすための戦略やロードマップは、果たしてどうやって作ればよいのか。しかし、前提として、戦略やロードマップよりも、イノベーションを起こすための重要な要素がある。
 カリフォルニア大学(米国)の名誉教授・野中郁次郎氏は、イノベーションに最も必要なことに「想い」というキーワードを挙げている。「月に行きたいと思わなければ月には行かなかった、とはよく言われるが、なんとか実現したいという想いこそが不可能を可能にし、イノベーションを実現する」
 イノベーションを起こすために必要なことは、技術的な要素よりも、むしろ、成し遂げようとする「強い想い」、「諦めない想い」であろう。これらが、多くの人々を変革する原動力となるからだ。
 「想い」に地域は関係ない。宮崎であっても当然、イノベーションは起こせるはずだ。むしろ、経済的に厳しい宮崎のために何かを成し遂げたいと考えれば、なおさら、想いは募るはずだ。
 現実に筆者も宮崎で、想いの強い中小企業の経営者にお会いしてきた。しかし、宮崎には、その想いを具現化する方法に関する情報が十分ではないことも否めない。
 そこで、本ブログでも、イノベーションのための戦略について議論していきたい。特に、地域産品を含めた製造業のマーケティングと、一時的な利益を継続的に持続させるための知的財産権の活用について検証していく。

  

2014年5月18日日曜日

オープンイノベーションを中小企業に

最近「シェア」という言葉が、業界の市場占有率を意味する言葉から、フェイスブックやツイッター等で、個人のつぶやきの共有を意味する言葉になった。

時代の流れは、一人で独占するより、他人と共有することを推奨しているのであろうか。そして、ビジネスまでも共有する時代になりつつある。それが、オープン・イノベーションという考え方だ。

米国半導体王手のインテルは、「インテル・インサイド」というコマーシャルで有名なように、パソコンの部品であるCPU(中央集積回路)の製造販売メーカであるため、CPUとそのCPUにデータの入出力を行う周辺の基板部分(マザーボード)の技術に特徴がある。彼らは、このCPU部分とマザーボード部分との両方の特許を取得するが、マザーボード部分に関しては、協力会社である台湾のメーカに安く特許をライセンスさせ、自由に製造させる。一方、CPUの部分は、他社へのライセンスを許さず、自社のみが製造・販売した。すると台湾メーカが安くマザーボードを販売することで、市場に多くのマザーボードが流通し、このマザーボードを使って、NECなどのパソコンメーカが組立てを行い、パソコン販売を始める。この際、このマザーボードに、インテルのCPUを内蔵させないとパソコンは動かないため、販売を独占しているインテルのCPUを、NECが購入して、市場に販売するようになる。結果として、インテルのCPUが高く多く売れるのである。すなわち、自社の技術の一部は、イノベーションを誘発するため台湾メーカのような他社に自由に使わせて、自社のコアとなる技術は、特許でしっかり防衛し、自社が独占し、利益を確保するということである。

「知的財産権なきイノベーションは慈善事業である」(大阪大学客員教授 玉井誠一郎氏)と指摘されるように、何か商業的な成功をするのであれば、どこか自社を守る部分を設けておかないと、他社による競合製品の進出により、持続的な経済活動は困難となるということである。この考え方は、「オープン&クローズ戦略」(関西学院大学客員教授の小川紘一氏)と言われ、自社のどの部分をオープンにして、どの部分をクローズにするかという「知」のマネジメントの重要性が指摘されている。この戦略は、大企業のみならず、中小企業にも応用できる。

都農でトマト鍋の元を製造販売している「都農もりあげ隊」代表の矢野純子さんは、デザイン化された「都農トマト鍋」という文字で商標を取得するか「都農もりあげ隊」という製造者名で商標を取得するか悩んでいた。矢野さんは、都農全体でトマト鍋を流行らせたいという意思をお持ちで「都農トマト鍋」の言葉を自分だけが独占している印象を与えたくないとのこと。でも、出所を示す「都農もりあげ隊」は真似されたくない。そこで、「都農もりあげ隊」の商標を取得した。「都農トマト鍋」という言葉をオープンにすることで他社や行政の協力を得られる一方で、自分たちの製造者のブランドを商標権で守る。

ビジネス成功の確率を僅かでも上げるため、小さくとも有効なオープン&クローズの考え方を意識したい。