2011年6月5日日曜日

顧客とのコ・クリエーション


従業員、顧客などを巻き込んで、これらのアイデアを製品に活かすことが、企業を強くする。

「生き残る企業のコ・クリエーション戦略」(徳岡書店)は、価値共創を提唱した、C・K・プラハラード教授の考え方を、ベンカト・ラマスワミ教授とフランシス・グイヤール教授が承継して、現在の企業にあてはめて分析した名著です。現在のビジネスモデルには、既に価値共創が必須となりつつあるのでは・・、ということを認識させます。昔からあるように、従業員を巻き込んでアイデアを製品に活かすというのは、部署を越えて、社員全員で製品アイデアについて考えるということです。それでは、顧客を巻き込むとは、現在においては、どのようなやり方なのか。

「ソフトウェアとはユーザの体験そのものです」

こう言い切るのは、有名なアップルのスティーブ・ジョブズです。アップルは、ソフトウェア、ハードウェアとともに、ヒューマンウェアということを、ビジネスの重要な要素と考えているようです。

アップルは、自らのソフトウェアの開発ツール(SDK)を外部に開放して、世界中の開発者が、自らアップルのソフトウェアを開発することができます。つまり、アップルの開発の喜びさえ、顧客は体験できるのです。そして、関係者である彼らから、様々な意見をもらい、それを新たなアップルの製品開発に反映させています。このような顧客は、時に、熱烈なファンになることが多いので、多くのエネルギーをアップルに費やしてくれて、そのエネルギーから生まれたアイデアを、アップルという会社にフィードバックしてくれるのでしょう。

このように、価値競争のビジネス面での現状の分析を各企業について解説してくれますが、この本で、私が最も価値があると感じたのは、本の最後の章に書かれた、コ・クリエーション型経済の到来という章です。

コ・クリエーションの枠組みを活用すれば、新たな富の想像ができるのではないかということを提唱しています。

つまり、上記の価値共創によれば、リンカーンのようにいうと、

「従業員や顧客(以下、関係者)のための、関係者による、関係者のための企業」をデザインすることが、ビジネスの成功を導くのではないかということになります。

当然、従業員のための企業をデザインすることは、魅力的な雇用となり、そこで働く人が豊かになり、ポジティブなアイデアが生まれる・・という好循環を生み出す可能性があります。

一方、顧客のための企業をデザインするとは、一般の人のための企業をデザインする・・ということになります。これは、企業が企業のためではなく、国民といいますか、一般人のために行動するということになりまして・・・どういうことなのか・・。今の世の中では、想像がつかない気もしますね。。

本の中では、このコ・クリエーション型の未来経済のヒントを述べて、この本を閉じています。このヒントとは、ビル・ゲイツが講演で、アダム・スミスから引用した以下の言葉です。私は、この考え方が、現状の資本主義の限界を変えていく可能性があるような気がしてなりません。

「人間がいかに利己的だと考えられていようとも、人間の本性には明らかに、ある原則が存在する。人間は他人の運命に関心をよせ、他人の幸福を必要とするものだ、という原則である。」


「次の新しい資本主義のシステムは、このように他人の運命に関心を寄せ、それを自分自身の運命に結びつけます。両者の生活を向上させるようなかたちで結びつけるのです。この利己心と他人への思いやりを兼ね備えた混合型システムは、そのどちらか一方のシステムよりも、はるかに多くの人に利益をもたらすでしょう。」

直接的には、この話が、コ・クリエーションの考え方とは、結びつかないかもしれませんが、示唆としては、非常に興味深く感じました。

つまり、企業自身ではなく、他人である関係者を中心とした資本主義に代わるシステムを、人類は構築できる本性があるし、次の時代には、作るべきではないか・・。ということだと思います。

現状の資本主義に限界を感じることもありますね。しかし、これがまだ、発展段階のシステムであると考えると、未来に希望が見えてきます。企業の意識変化が、次の資本主義を作る原動力になるのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿